研究課題/領域番号 |
26462502
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
東海林 博樹 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (10263873)
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研究分担者 |
有川 智博 金沢医科大学, 一般教育機構, 講師 (70452670)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胎盤 / 栄養膜細胞 / 浸潤 / ガレクチン / レクチン |
研究実績の概要 |
ガレクチンファミリーは、細胞が極性をもって安定した状態を保つのか、あるいは極性を失って浸潤能を獲得するのかという制御に、普遍的に関わっているらしいことが判明しつつある。本研究では、胎盤栄養膜細胞のinvasive trophoblast への分化系をモデルとしてその立証と分子メカニズム解明をめざす。これまでに我々はラット栄養膜細胞株Rcho-1細胞分化系にて、ガレクチン4がその分化制御に関わる可能性、さらにRcho-1細胞には、ガレクチン4の従来知られているタンパク質よりも分子量の小さい新規アイソフォーム(short form)が発現している可能性を示してきた。今回、その点について次世代シーケンサーを用いた RNAシーケンスによる解析を行ったところ、Rcho-1細胞mRNA中に、ガレクチン4遺伝子から転写される未知のスプライシングアイソフォームが存在することを支持する結果が得られた。さらにこのアイソフォームmRNAがコードすると推測されるタンパク質の分子量は、我々がウェスタンブロット法にて検出していたshort formの分子量と概ね一致するものであった。現在このshort formタンパク質の存在を確認すべく解析を進めている。 一方我々は、これまでの解析で Rcho-1 細胞分化系においてガレクチン9の発現が上昇傾向にあることも認めている。ガレクチン9は、我々の解析により、肺上皮細胞株において、上皮間葉転換を促進することが示唆されている因子である。invasive trophoblast の浸潤能の制御におけるガレクチン9の作用を解析するために、ヒト栄養膜細胞株JEG-3培養系に組換えガレクチン9を添加したところ、突起の伸長が認められた。この突起が、がん細胞に認められる浸潤突起様のものであれば、ガレクチン9は栄養膜細胞の浸潤を促進する可能性が高くなる。 以上の結果から、栄養膜細胞の浸潤能獲得におけるガレクチンファミリーによる制御機構の理解が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガレクチン4の新規アイソフォームについては、これまでウェスタンブロットによるタンパク質の検出のみであったが、今回mRNAのスプライシングアイソフォームの存在を示唆する結果が得られた。また、ガレクチン9については、これまで浸潤能獲得過程における発現変化の検出に留まっていたが、今回突起形成の促進という、作用機序の理解につながる現象を発見できた。
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今後の研究の推進方策 |
ガレクチン4については、まず新規アイソフォームのタンパク質精製を試み、質量分析あるいはアミノ酸配列解析等により、その存在を確実に同定するとともに分子構造も解明する。さらに、栄養膜細胞分化系にてこのアイソフォームのcDNA導入やsiRNA等により発現を操作し、浸潤能獲得への影響を解析して行く。一方、ガレクチン9に関しては、まずはガレクチン9刺激によりJEG-3細胞が形成する突起がどのようなものなのかの解析を急ぐ。そして、ガレクチン9についても、培養系での遺伝子発現操作、さらには既に導入済みのノックアウトマウスを用いた解析へと発展させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質精製実験を計画していたが、今年度は行わなかった。その分の予算が残金となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度行うタンパク質精製実験に必要な物品の購入に充てる。
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