本研究では胎盤栄養膜細胞をモデルとしてガレクチンファミリーによる浸潤能獲得制御機構の解明を目指した。我々はこれまでに、ラット栄養膜細胞株Rcho-1分化系において、ガレクチン4がその分化制御に関わる可能性、さらにRcho-1細胞には、ガレクチン4の従来知られているタンパク質よりも低分子の新規アイソフォームが存在する可能性を示してきた。平成26~27年度においては、この点について集中的な解析を行い、ガレクチン4の発現が栄養膜細胞の接着性に関わる可能性を示すと共に、ガレクチン4遺伝子からの選択的スプライシングによりつくられる新規mRNAを同定した。また一方、Rcho-1細胞分化系において、ガレクチン9の発現が上昇傾向にあることを見いだした。さらにガレクチン9の作用を解析するためにヒト栄養膜細胞JEG-3培養系に組換えガレクチン9を添加したところ、突起の伸長が認められた。この意義については引き続き解析を行っている。 平成28年度には以下の解析を行った。まず、ガレクチン4の新規アイソフォームの解析では、今回同定した新規mRNAのcDNAをRcho-1やCOS7などの培養細胞に導入し、そこから発現されるタンパク質をウェスタンブロット法により解析した。しかし、Rcho-1に認められた内在性の新規アイソフォームタンパク質とは分子量が異なったため、さらなる解析が必要と判断された。また一方、我々はこれまでに、栄養膜細胞の分化過程におけるガレクチン4の発現変化(減少)の上流ではオートファジーが関与することを示してきた。この点についてさらなる解析を行い、オートファジー阻害剤添加により、ガレクチン4の発現変化が抑制されることと、浸潤活性の抑制が相関して起こることが明らかとなった。以上の結果から、ガレクチンファミリーが胎盤栄養膜細胞による浸潤能獲得制御に重要な役割を担う可能性が示された。
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