研究実績の概要 |
「不育症の遺伝子研究の実績概要」:生理的な凝固制御因子であるアンチトロンビン(AT)、プロテインC (PC)、プロテインS(PS)の先天性の各欠乏症(先天性血栓性素因)は、静脈血栓塞栓症の素因であることが広く知られている。私たちは、日本人特有の先天性血栓性素因であるPS K196E変異は不育症の遺伝的リスクにはならない事、また稀なPS、PC、ATの変異は対照群の頻度がないため確定はできないが、不育症の3.3%しか認めないので、不育症の主な原因とはなりにくいと考えた。これらを原著論文(Neki et al, Thrombosis Research, 2014)と2つの学会誌(2015年、2016年)に総説として執筆した。 「妊娠高血圧症候群の遺伝子研究の実績概要」:近年、妊娠高血圧症候群の一分類である妊娠高血圧腎症には、免疫系の障害、特に補体系の破綻が関与することが示唆されている(Salmon et al, PLoS Med, 2011)。しかし、国内での妊娠高血圧腎症の補体因子の遺伝子変異の研究は未だ行われていない。「妊娠高血圧症候群の補体系因子の研究」として、妊娠高血圧腎症を含む妊娠高血圧症候群の遺伝的背景を明らかにするため、補体系と凝固系因子の115遺伝子の解析、補体マーカーの測定を行い、補体遺伝子変異と妊娠高血圧症候群の関連性の解析を日本補体学会の協力の元に行った。最終年度の結果として、登録した6症例のうち、解析結果の出た4症例については、疾患に関連すると考えられるバリエーションは認めなかった。ただし115遺伝子の中に、アレル頻度の非常に低いバリエーションが見つかっており、今後さらに症例を集積し検討が必要であると考える。
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