研究課題/領域番号 |
26462512
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
太田 剛 山形大学, 医学部, 助教 (50375341)
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研究分担者 |
高橋 俊文 山形大学, 医学部, 講師 (20302292)
倉智 博久 山形大学, 医学部, 非常勤講師 (40153366)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / ハニカム膜 / 癌幹細胞 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
本研究では様々な生体親和性素材から合成することが可能で、均一な多孔性膜であるハニカム膜 (honey-comb film)を用いて、卵巣がんにおける新規治療法の開発を目指して、研究を遂行している。 我々はpreliminaryな実験として生体素材であるPCL(Poly(ε-caprolactone))を用いてハニカム膜を作成し、in vitroにおけるハニカム膜の卵巣癌細胞抑制効果を検討したが、今年度は、将来の臨床応用を見据え、PCLより親水性と柔軟性が高い素材であるpolyurethane(PU)を用いてハニカム膜を作成し、in vitroでの卵巣癌細胞増殖抑制効果の検討を行った。4種類の卵巣癌細胞株(SKOV3, TOV21G, Caov3, A2780)を12 well plateの組織培養プレート(TC; tissue culture)とプレート上にコントロール膜(平膜:計17枚)またはハニカム膜(孔径小(約5μm), 中(約10μm), 大(15μm以上):計21枚)をそれぞれ貼付し、各細胞をまいた。FBS(+)の細胞培養液内で48時間培養後、DAPI核染色を行い、蛍光顕微鏡100倍率でランダムに5視野をとり、細胞数をカウントした。癌細胞株によっては、TCと比較してPU平膜でも細胞増殖抑制を認めた。PUハニカム膜では孔径に関わらず、いずれの細胞株でも高い細胞増殖抑制効果を認めた。 さらに我々はin vivoでもハニカム膜が腫瘍形成を抑制するか否かを検討した。5~7週令マウスの皮下に卵巣癌細胞SKOV3ip1を接種し、腫瘍径が10mmに達した時点で、麻酔下でマウスに皮下切開を加え、形成した腫瘍表面にPU平膜、PUハニカム膜(孔径:小、中、大)をそれぞれ貼付し、術後49日後に形成した腫瘍を摘出し、重量を計測した。PUハニカム膜の孔径小と中では腫瘍重量の著しい減少を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PUハニカム膜が卵巣癌細胞の増殖・腫瘍形成を抑制することをin vitroで見出した。ただし、nが少ないこと、孔径と増殖効果に関連性を認めなかったことなどが課題としてあり、さらに実験を重ねていく必要性がある。この研究を発展させることでハニカム膜を用いた卵巣癌に対する新たな治療戦略を確立できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在までPUハニカム膜がin vitroにおいて卵巣癌細胞の増殖、腫瘍形成を抑制することが分かっている。今後はアポトーシス、細胞接着、細胞外マトリックス、細胞周期に関連した遺伝子の発現をマイクロアレイで網羅的に解析し、PUハニカム膜の癌細胞増殖抑制機序を検討する。候補遺伝子の発現をRael-time PCRで、蛋白発現をimmunoblotで確認する。またin vivoでもハニカム膜が腫瘍形成を抑制するか否かを検討中である。 さらにハニカム膜の孔径を変えることで神経幹細胞が、神経細胞に分化すること、または幹細胞の性質を保持したまま増殖することが報告されている (Tanaka M, et al. Patent application PCT/JP2006/303909)。また癌幹細胞は増殖速度が緩徐であり、sphereを形成するという特徴を持つ。そのためハニカム膜の増殖抑制実験で細胞増殖が最も抑制された細胞株を走査電子顕微鏡で観察し、sphereの形成の有無をみる。sphereの形成を認めた細胞を回収し、幹細胞マーカー(Nanog, Oct3/4, SOX2, Nestin)の発現をRT-PCRまたはimmunoblot法で検討する。さらにsphere形成細胞をマウスに注入し、腫瘍産生能を検討する。
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