研究課題
【目的】近年、細胞内のタンパク質を分解するための機序の一つであるオートファジー(自食作用)と癌の関係性が注目されているが、子宮体癌において、オートファジーの役割については、十分な知見が得られていない。そこで、オートファジー阻害剤の子宮体癌における抗腫瘍効果、アポトーシス誘導作用を解明することを研究の目的とした。【方法】子宮体部細胞株6種類を用いて、オートファジー阻害剤(抗マラリア薬として実地臨床使用歴あり)クロロキンを添加し、MTTアッセイ法、Flow cytometry法にて細胞増殖抑制能を評価した。また、Annexin V法にてアポトーシス誘導能を検討した。さらに、Ishikawa株を用いてシスプラチン耐性株(CP-r)を樹立し、クロロキンの効果を親株と比較した。【成績】子宮体癌細胞株6種類にクロロキンを添加した。クロロキン添加により、LC3蛋白の蓄積やオートファゴソ―ムの形成が認められており、オートファジーが実際に阻害されていること確認した。MTTアッセイを施行したところ、全6株において、クロロキンは濃度依存性に子宮体癌細胞の増殖抑制効果を示した。Flow cytometryによる細胞周期の解析では、いずれの細胞株でもSub-G1の比率が濃度依存性に上昇しており、Annexin V法にて、アポトーシスを誘導することが示された。さらに、MTTアッセイにてシスプラチン耐性株CP-rでは、クロロキンの感受性が高まり、シスプラチンとクロロキンの併用により、シスプラチンの感受性が高まることが示された。【結論】クロロキンはオートファジー阻害剤として、子宮体癌の増殖抑制、アポトーシス誘導作用を有しており、有望な新規分子標的治療法として期待される。さらに、オートファジーはシスプラチン耐性とも関連しており、シスプラチン耐性を示す子宮体癌細胞において、薬剤耐性を克服する手段としても有効である可能性がある。
1: 当初の計画以上に進展している
順調に研究を遂行できており、研究の成果を英語論文としてすでに投稿を行った。査読において改訂を求められたが、追加実験を行ったうえで再投稿まですでに済ませており、初年度としては、当初の計画以上に研究成果が得られているといえる。また、子宮体癌における放射線照射の感受性規定因子に関する研究でも成果が得られ、すでに論文投稿を行った。卵巣がんを用いた他のプロジェクトも現在進行中である。H26年度のAmerican Association for Cancer Research (AACR) Annual Meetingをはじめ、国内外の学会発表の場でも研究成果を報告している。以上の通り、本研究プロジェクトは非常に順調であり、当初の計画以上の進展があったといえる。
平成26年度は、子宮体癌においてアポトーシスを誘導する新たな分子標的治療法としてクロロキンが有望であることを明らかとした。H27年度以降においても、これまでの成果をもとに子宮体癌・卵巣癌におけるアポトーシスを誘導する新規分子標的治療法の探索研究を遂行していく予定である。今後については、以下の2つのプロジェクトを中心に研究をさらに推進していく予定である。一つは、子宮体癌における放射線照射の感受性を予測する因子の解明、放射線感受性を増強し、アポトーシス誘導効果を示す分子標的薬の探索である。子宮体癌における治療選択肢の一つである放射線治療をより効果的に活用することのできる、新たな治療法の提唱を目的とする。もう一つは卵巣癌におけるアポトーシス誘導能を有する分子標的治療法の探索である。卵巣粘液性腺癌や明細胞腺癌といった、抗癌剤感受性の低い組織型を中心に研究を進めていく予定である。
本年度は昨年度までに購入した物品・消耗品を主に使用しながら効率的に実験を進めたために、次年度使用額が発生した。
年度をまたぐプロジェクトの総合的推進に向けて、本資金を次年度に有効活用する予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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