研究課題/領域番号 |
26462516
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高倉 正博 金沢大学, 大学病院, 准教授 (20313661)
|
研究分担者 |
藤原 浩 金沢大学, 医学系, 教授 (30252456)
京 哲 島根大学, 医学部, 教授 (50272969)
尾崎 聡 金沢大学, 保健学系, 助教 (40401921)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 末梢血中腫瘍細胞 / テロメラーゼ |
研究実績の概要 |
末梢血中腫瘍細胞(circulating tumor cells: CTC)はいくつかの癌種において予後マーカーと成りうることが示されているが、その測定法や臨床的意義の解明などはいまだに発展途上である。現在のCTC測定法は腫瘍細胞表面の上皮特異抗原を検出するものが主流であるが、癌細胞は血管内に侵入する際に上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition: EMT)をおこし上皮的性格を失うことがあることが知られている。また上皮特異抗原を呈するから必ずしも腫瘍細胞であるという保証もない。本研究では発想を転換し、癌細胞の根源的性質の一つである不死化に関連した酵素テロメラーゼの活性化に注目し、テロメラーゼが活性化された細胞でのみ増殖可能な改変型アデノウイルス(Telomerase-specific replication-selective adenovirus: TRAD)を用いた新しいCTC測定法を確立した。本研究はこれを用いて婦人科癌におけるCTCの臨床的意義を解明するとともに、CTCの単離と遺伝子変異解析法を確立することで、癌の転移機構の解明につなげることを目的としている。 本年度は臨床検体におけるCTC単離とそれに引き続いたCTCの遺伝子解析を原発巣のHPV typeデーターが得られている子宮頸癌患者を対象として行った。また卵巣癌患者においても同様の検討を行い、原発巣に一致する遺伝子変異を検出した。以上より本法で検出されるCTCが真の腫瘍細胞であることが証明された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①子宮頸癌においてほぼすべてのCTCにおいて原発巣に一致するHPV DNAを検出することができた。また卵巣癌においても原発巣と一致する遺伝子変異を認めることができ、本法の有効性が確認された。 ②TRAD-GFPを用いたCTC検出方法の改良 TRADを用いたCTC検出法の問題点の一つは白血球においてわずかな偽陽性が認められる点である。偽陽性率は大変に低いものであるが白血球の数がCTCに比べて膨大(数百万~数千万倍)であるため、無視できないものである。我々は白血球共通抗原CD45の免疫染色を加える事で偽陽性を排除していたが、白血球で特異的に増加しているmiRNAであるmiR142-3pの結合配列をGFP遺伝子の3'UTRに組み込むことで白血球内でのみGFPの分解が起こるようにした。これによって偽陽性が大幅に減少し観察の精度が向上した。 ③少数例の検討では子宮頸癌におけるCTCの検出と臨床病理学的因子には明らかな相関は認められなかった。これは初期癌においてもCTCが認められることが一つの原因となっている。今後予後との関連も含めてさらなる検討が必要と考えられる。またさらに症例を増やした検討も必要であろう。 ③子宮頸癌において検出されたCTCの上皮マーカーの発現について検討したところ、ほとんどのCTCは上皮マーカーであるサイトケラチンの発現を欠くことが明らかになった。このことが示す臨床的意義は未だ明らかではないが、従来の上皮マーカーに依存したCTC検出法では不十分であることの証左と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
①婦人科癌患者におけるCTCの測定:引き続き臨床検体でのCTC測定を行い、多検体でのデーターを蓄積する。得られたデーターは臨床病理学的な因子との関連性、予後との相関についてさらに検討し、婦人科癌におけるCTCのバイオマーカーとしての臨床的意義を明らかにする。 ②CTCにおける遺伝子発現解析 我々が検出したCTCは多くが上皮マーカーの発現を欠くものであった。これに際して細胞にどのような変化が起こっているのかを明らかにすることでCTCの生物学的意義を解明したい。そのためには単一細胞からのmRNA抽出とマイクロアレイなどによるその遺伝子発現解析が必要となる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
CTCの遺伝子解析が順調に推移したため、当初推定していたよりも試薬の使用量などが少なく経費がかからなかったためと考えられる。
|
次年度使用額の使用計画 |
CTCの遺伝子発現に関してマイクロアレイでの検討を行うことを想定しているため、それに対する経費として利用することが想定されている。
|