研究実績の概要 |
前年度用いたFOSL1遺伝子配列をシークエンス解析により確認したところ、終止コドンの最終塩基の変異が判明した。そこで、アミノ酸配列が野生型と相同なFOSL1 cDNAを人工合成して用いることにした。BCAR3遺伝子過発現実験の場合と同様に、人工FOSL1遺伝子とtdTomato遺伝子を構成的に発現するpBI-CMV1-tdTomato-FOSL1 vectorを作成し、tdTomato蛍光を指標としてFOSL1遺伝子過発現細胞特異的な増殖率を検出できるようにした。対照群には、dTomatoのみを構成的に発現するpBI-CMV1-tdTomato vectorを遺伝子導入した。全細胞に占めるtdTomato陽性細胞率は、対照群では14.9±2.08%、FOSL1遺伝子導入群では17.8±2.29%であった 。10 nM E2を24時間処置した場合のtdTomato陽性細胞の増殖率は、対照群では、vehicle処置群の8.3±0.44%から、1.7±0.37%に低下し、FOSL1遺伝子導入群でも、vehicle処置群の5.8±0.34%から0.8±0.13%に低下した。対照群とFOSL1遺伝子導入群の増殖率はE2処置により、20.5%および13.8%に低下した。FOSL1抗体(Cell signaling technology, #5281)を用いたウエスタンブロッティングにより、対照群では、FOSL1蛋白発現量はE2処置により低下したが、FOSL1遺伝子導入群では、対照群よりも発現量は多く、E2処置による発現量低下も認められないことを確認した。以上より、FOSL1遺伝子を過剰発現させたMDA-ER細胞においても、10 nM E2処置により、細胞増殖率は有意に抑制されたことから、FOSL1遺伝子発現の低下もE2の細胞増殖抑制作用を仲介するものではない可能性が示唆された。
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