研究課題
卵巣がんの中で治療抵抗性の卵巣明細胞腺癌について癌幹細胞の研究を進めている。手術検体を用いて癌幹細胞マーカーの候補であるALDH1の発現を免疫組織染色により検討し、その結果を組織型で分類し、予後との関連性を検討した。現時点では、明細胞癌においては、進行期との相関があり、I,II期に比べ、III,IV期の方がALDH1の発現率が有意に高いという結果が得られた。さらにALDH1の発現率が高い症例ほど無病生存期間が短いことを確認した。明細胞卵巣癌細胞株KOC7Cを用いて、卵巣癌幹細胞マーカーであるALDH1の陽性細胞と陰性細胞に分け、ROSの活性を試験的に検討したところ、陽性細胞の方がROS活性が低い傾向が見られた。ROSを抑制するメカニズムとしては、①ROS産生を抑制する、②産生されたROSを解毒化するという二つの経路が考えられる。②の経路において主要な働きをしているのが、Keap1-Nrf2シグナル経路である。このシグナル経路は、酸化ストレスに対する生体防御機構において重要な役割を果たしている。Nrf2が恒常的に安定化すると、抗癌剤に対して耐性になることが示されていることから癌幹細胞はNrf2を高発現することでROSなどの酸化ストレスを回避し、治療抵抗を示し生存し続けていることが想定された。卵巣明細胞腺癌において、ALDH1をマーカーとした癌幹細胞がNrf2を始めとした解毒、抗酸化作用に関わる遺伝子発現の活性化によりROS活性を低くし、治療抵抗性を誘導していることを示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
計画調書通りすすんでいるから。
ALDH1陽性細胞と陰性細胞での遺伝子発現の網羅的解析を進める。ソーティングにより分取したALDH1陽性細胞と陰性細胞から各々total RNAを抽出する。受託mRNA発現マイクロアレイの解析結果を元にデータマイニングを行い、ROS関連遺伝子を中心に、パスウェイ解析、GO解析等を行う。発現レベルが大きく異なる遺伝子に注目し、生化学的実験を行う。
購入予定していた消耗品の数が少なく済んだため。
抗体、試薬等を中心に購入し、学会発表等に活用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 2件)
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