研究課題/領域番号 |
26462523
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
馬淵 誠士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452441)
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研究分担者 |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00452392)
橋本 香映 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90612078)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | MDSC / Bevacizumab耐性化 / 転移・浸潤 / 前転移ニッチ |
研究実績の概要 |
我々は、血管新生阻害薬に対する耐性化機構を解明することを目標として、骨髄由来細胞および前転移ニッチに焦点をあて、①抗血管新生治療薬に対する耐性化のメカニズムの解明、②骨髄由来細胞および前転移ニッチを標的とした耐性化の克服法の確立、③より有効な抗血管新生治療の確立、を目指して研究を行ってきた。 平成27年度は、【1】VEGF阻害薬投与中、転移予定の臓器に、転移を促す微小環境の変化(ケモカインの過剰発現に特徴づけられる前転移ニッチの形成)がおきるのか?【2】骨髄由来細胞が癌細胞の増殖・浸潤・前転移ニッチ形成に与える影響の検討、【3】骨髄由来細胞や前転移ニッチの形成を阻害することにより、VEGF阻害薬投与中の癌の逃避(遠隔転移)を抑制できるか?の3つを明らかにすべく研究を実施した。 まず我々は、様々な癌細胞を皮下移植したヌードマウスを用い、転移予定の臓器に、転移を促す微小環境の変化(ケモカインの過剰発現に特徴づけられる前転移ニッチの形成)が形成されるのか?を検討した。その結果、癌細胞が転移する前のヌードマウスの肺および肝臓において、Myeloid derived suppressor cell (MDSC)が多数集積していること、またそのMDSCが浸潤・転移を促す蛋白質(S100A9およびMMP-9)および血管新生を促進する因子Bv8を発現していることが確認できた。つまり、MDSCが前転移ニッチの形成を介して癌細胞の増殖・浸潤を促進している可能性が示された訳である。さらに同じくヌードマウスを用いた実験により、抗Gr1抗体を用いてMDSCを阻害すると、転移前臓器へのMDSCの侵入および前転移ニッチの形成が阻害され、癌の転移が抑制できることが示された。これらの研究を通じて、前転移ニッチを標的とした癌治療により、癌の転移が抑制できる可能性がマウスレベルで証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌細胞が転移する前のマウスの肺および肝臓において、Myeloid derived suppressor cell (MDSC)が多数集積していること、またそのMDSCが浸潤・転移を促す蛋白質(S100A9およびMMP-9)および血管新生を促進する因子Bv8を発現していることが確認できた。つまり、MDSCが前転移ニッチを形成し、癌の浸潤・転移、また血管新生を促すことが確認できた訳である。MDSCによる前転移ニッチの形成がBevacizumab耐性化に関与しているか否かについては現在検討中であるが、これまでの研究成果はその可能性を強く示唆しており、比較的近い将来、結果が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、【1】VEGF阻害薬による抗血管新生治療中に卵巣癌が産生し、治療抵抗性に関与する分子の同定(サイトカインの網羅的解析、【2】卵巣癌から産生されるサイトカインによって誘導される骨髄由来細胞の解析(最も重要な骨髄由来細胞の特定)、【3】VEGF阻害薬投与中、転移予定の臓器に、転移を促す微小環境の変化(ケモカインの過剰発現に特徴づけられる前転移ニッチの形成)がおきるのか?【4】骨髄由来細胞が癌細胞の増殖・浸潤・前転移ニッチ形成に与える影響の検討、【5】骨髄由来細胞や前転移ニッチの形成を阻害することにより、VEGF阻害薬投与中の癌の逃避(遠隔転移)を抑制できるか?の5つを明らかにすべく研究を行い、これらのテーマの大部分については、ほぼ研究を完了している。現在、MDSCが前転移ニッチの形成を介してBevacizumab耐性化に関与するか否かについての直接的な証明を行うべく、実験を実施している。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度(28年度)に使用する物品費を考え、控えて使用した。 また、動物実験施設利用料等その他にかかる支出が当初の計画より多いため、他の支出を抑えた為。
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次年度使用額の使用計画 |
実験試薬や器具(主に、物品費)の購入に充てる。
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