研究課題/領域番号 |
26462525
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
村上 明弘 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70379965)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子宮肉腫 / 間葉上皮転換 / carbonyl reductase 1 |
研究実績の概要 |
子宮体癌でcarbonyl reductase1(CBR1)の発現が低下している症例では有意に予後不良であることを報告した。これは、CBR1の発現低下が上皮間葉転換(EMT)を誘導し、癌の浸潤・転移能を亢進させることによるもので、実際にin vivo実験でCBR1の発現を抑制した子宮体癌細胞を移植したところ、有意に腫瘍増殖が亢進した。さらに我々は、反対にCBR1を過剰発現させると、間葉上皮転換(MET)が誘導され、癌細胞の浸潤能が抑制され、in vivo実験でも有意に腫瘍増殖が抑制されることを見出した。本研究は、難治性悪性腫瘍である子宮平滑筋肉腫に対して、CBR1を過剰発現させて間葉上皮転換を誘導し、その結果、“間葉系悪性細胞(肉腫)を上皮系悪性細胞 (癌)に変化させる”ことによって悪性化を低下させ、抗癌剤の感受性を高めるという新たな分子標的治療の実現を目指す。 <平成26年度の目標> in vitroでCBR1の過剰発現により、子宮平滑筋肉腫細胞に間葉上皮転換が誘導され、細胞機能にどのような影響を及ぼすか検討する。 <研究結果> 子宮平滑筋肉腫細胞に対してセンス・アンチセンスCBR1 cDNAを遺伝子導入したところ、CBR1の過剰発現(SKN-S)により細胞形態は紡錘状から敷石状の形態に変化し、間葉上皮転換が誘導されていることが強く示唆された。また、CBR1を過剰発現させた場合はMMP-2の分泌が抑制され、浸潤能の抑制が強く示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
形態学的に間葉上皮転換が起きていることが強く示唆されるが、carbonyl reductase 1の発現をウエスタンブロットで確認することが困難な状態にある。つまり、発現が安定しないために、上皮マーカーおよび間葉マーカーの確認が難しい状態にある。よって、研究予定よりやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
子宮肉腫細胞にヒトcarbonyl reductase 1を効率よく過剰発現をさせるために、導入ベクターの組み替えを考えている。これによって、carbonyl reductase 1の発現の安定化が起き、間葉上皮転換に関するマーカーの発現を確認しやすくなると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
carbonyl reductase 1の発現が効率よくいかないために、遺伝子導入ベクターの組み替えを行い実験を再開している。よって、間葉・上皮マーカーの発現についての確認を再度実験中である。よって、この実験を確認するための、RT-PCR用の試薬、ウエスタンブロット用の抗体および試薬の購入を見合わせていたために、予算の使用が進んでいない。また、この実験結果が遅れているために、腫瘍移植ヌードマウスの購入を控えており、予算の使用が進んでいない。 また、研究の進行がやや遅れているので、海外学会での発表を見合わせている。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子導入ベクターの完成が確認できたので、carbonyl reductase 1の安定した発現が見込まれるために、間葉上皮転換の確認ができると思われる。また、遺伝子導入による腫瘍の移植もできると考えるので今後は実験計画通りの進行が期待できる。よって、予算の使用も進むと考える。
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