研究課題
子宮がん検診の普及および治療法の確立により進行子宮頸癌の頻度は減少し,死亡率はこの40年間で約1/3になった。しかし,依然として子宮頸癌は婦人科悪性腫瘍の中でも最も頻度が高い疾患である。子宮頸癌の病因としてHPV(human papilloma virus)の関与は既に明らかとなり,子宮頸癌の約90%にHPV感染が認められる。しかし,HPV感染者のほとんどは子宮頸癌を発生することはなく,またHPV16あるいはその転写産物であるE6/E7 トランスジェニック(Tg)マウスにおいても子宮頸部病変は異形成にとどまり,浸潤癌は発生しない。そこで,HPV感染と同時に存在する発癌関連遺伝子の異常が近年重要と考えられている。われわれはこれまでに種々の発癌関連遺伝子(transforming growth factor-α;TGF-α,c-src,c-erbB2,insulin-like growth factor-1;IGF-1,E2F1)のTgマウスを作成し,これらのマウスにおいて皮膚癌,胆嚢癌,前立腺癌などが発生することを明らかにしてきた。本研究において,以下のことを明らかにできた。 1)EGFRのligandであるTGF-αを過剰発現させた Tgマウスにおいて,cervical intraepithelial neoplasia grade 3(CIN3)が38%の頻度で発生した。2)成長因子の一種であるIGF-1を過剰発現させたTgマウスにおいてCIN3の発生を21%の頻度にて観察できた。3)癌遺伝子であるc-srcを過剰発現させたTgマウスの30%にCIN3が発生していることを見い出した。4)転写因子であるE2F1を過剰発現させたTgマウスにおいて子宮頸部扁平上皮癌が発生していることを明らかにした(頻度:38%)。
すべて 2016
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Molecular and Clinical Oncology
巻: 13 ページ: 310-316
10.3892/mco.2016.929