研究課題/領域番号 |
26462529
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
浅野間 和夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30380413)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子宮内膜癌 / 上皮間葉移行 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
正常子宮内膜と子宮内膜癌におけるDEC1、DEC2の蛋白レベルでの発現を免疫組織染色法を用いて解析した。すでに実施していたmRNAレベルでの解析結果と同様、DEC1は正常子宮内膜で高発現しており、癌との発現差を認めなかった。DEC2は正常内膜ではほとんど発現を認めず、癌では高発現を認めた。mRNAレベルでの解析と同様、DEC1、DEC2の蛋白レベルでの発現は共に病期IA期において高発現を認めたものの、IB期以上の浸潤癌においてはIA期に比較して明らかな発現低下を認めた。さらに我々がDEC1、DEC2の標的遺伝子として同定したTWIST1の発現はmRNAレベル、蛋白レベルのいずれにおいてもDEC1、DEC2の発現量と有意な逆相関関係を示した。DEC1、DEC2はTWIST1のプロモーター領域におけるSP1結合部位をSP1と競合することによりTWIST1の転写を調節することが昨年度までの解析で分かったが、さらにクロマチン免疫沈降法によりこの知見の検証を行った。HEK293細胞にDEC1、DEC2を強制発現させたものから抽出したDNA-蛋白複合体をSP1、PCAF、HDAC1、アセチル化ヒストンH3を用いて免疫沈降したところ、DEC1/DEC2を高発現させることによりTWIST1プロモーターのSP1結合部位に対するSP1、PCAF、アセチル化ヒストンH3の結合が抑制され、HDAC1との結合が増加した。この結果からもDEC1、DEC2はTWIST1プロモーターのSP1結合部位を巡ってSP1と競合しており、この機序によりTWIST1の転写が制御されていることが証明された。昨年度、今年度の結果を合わせて論文作成して投稿し、分子生物学領域で著名な国際誌であるMolecular and Cellular Biology誌に論文掲載となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DEC1、DEC2が子宮内膜癌においてその浸潤を抑制する癌抑制遺伝子として働いている。またその標的遺伝子の一つがTWIST1であり、SP1との機能的な競合により、TWIST1の発現が制御されていることを見出し、分子生物学分野で著名な国際誌であるMolecular and Cellular Biology誌に論文掲載となった。順当な成果を挙げたと自負する。ただ、当初、DEC1、DEC2の標的遺伝子を網羅的に探索するためクロマチン沈降法による全ゲノム解析を計画していたが、これはまだ実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにDEC1、DEC2が癌の浸潤を抑制することを見出し、その標的遺伝子として上皮間葉移行関連分子TWIST1を同定し、詳細な解析結果を論文発表した。今後は、当初計画していたクロマチン沈降法による全ゲノム解析を行うことで、新規のDEC1、DEC2の標的分子を網羅的に探索し、あらたな癌関連遺伝子を同定しDEC1、DEC2との関連を含めた発現・機能解析を進める予定である。また、子宮内膜癌におけるDEC1、DEC2の発現制御機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験をできるだけ計画的に実施し、業績を上げることを目指したが、当初の計画と実施状況が前後している部分がある。このため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は、当初計画していたクロマチン沈降法による全ゲノム解析を行うことで、新規のDEC1、DEC2の標的分子を網羅的に探索し、あらたな癌関連遺伝子を同定しDEC1、DEC2との関連を含めた発現・機能解析を進める予定である。また、子宮内膜癌におけるDEC1、DEC2の発現制御機構の解明を目指す。
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