研究課題/領域番号 |
26462531
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
島田 勝 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (40301452)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | HPV / アポト-シス / 免疫沈降法 / 質量分析法 / 受容体 |
研究実績の概要 |
ヒトパピロ-マウイルス(HPV)は子宮頸がんの原因ウイルスである。現在、日本で承認された子宮頚癌ワクチンの有効性は示されつつあるが、HPV血清型間の交差性が低く、約50%の子宮頚癌しか予防できない。更に、子宮頸がんに対する有効な治療薬はまだ開発されていない。そのため、次世代のHPVに対する治療・予防法が求められている。しかし、HPV感染による発がん機構がまた、完全に解明されず。 今年度ではHPV遺伝子産物に結合する細胞分子を網羅的に同定およびHPV感染時に結合する細胞膜分子の同定により発がんの分子メカニズムの解明を目的とする。 ①HPV蛋白の発現が非常に低いため、我々はまず、全HPV遺伝子をヒトコドンに最適化し、それぞれを合成する。そのタグ付きHPV遺伝子を発現するプラスミドを高発現細胞に導入し、免疫沈降法でHPV遺伝子産物と結合する細胞分子を質量分析法で網羅的に解析する。更にそれらの細胞分子とHPV遺伝子産物の相互作用を体外実験で確認し、HPV感染による、細胞のがん化とそれら細胞分子の働きについて検討する。 ②HPVの持続感染培養細胞が存在しないため、HPVは人工的に作成する必要がある。我々は高力価のHPV疑似ウイルス(HPV VLP)の作製に成功した。さらに、高力価のFlagタグ付きのHPV-VLPの作製にも成功した。今年では、そのHPV VLPを用いてHPV感受性細胞に感染し、HPVウイルスの細胞へ感染過程の解明及びウイルス感染に関連細胞分子の同定により、HPVウイルス感染への新規な予防・治療法の開発を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①HPVに主な発がん遺伝子はE6及びE7である。我々は免疫沈降法および質量分析法でE6及びE7遺伝子産物と結合する新規細胞分子はそれぞれ16個と65個を同定された。その中にp55という細胞分子はE6とE7両方結合することを確認された。そのp55が高発現すると、細胞はアポト-シスによる死ぬことが明らかにした。E6及びE7遺伝子はp55に影響を与えるより、細胞が癌化するではないかを検討している。 ②高力価のHPV VLPを使用し、HPVが細胞感染に関わる細胞膜分子を同定した。その細胞膜分子をsiRNAで発現を抑制すると、HPVウイルスの細胞感染は35%まで低下したことを確認された。
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今後の研究の推進方策 |
①更に詳細にE6及びE7遺伝子とp55細胞分子の相互作用を解析する。E6、E7のどのドメンはp55のどのドメン結合するか、細胞のどちらの局在で結合するか?その結合によって、p55の変化及び細胞の癌化との関連を検討する。 ②同定されたHPVが細胞感染に関わる細胞膜分子について詳細に解析する。その細胞膜分子の異体、欠損細胞などを用いてHPVとの結合、感染などにおける機能を検討する。さらに、この分子に対する中和抗体の作成を行い、HPV感染の予防法の開発を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初人件費として計画していたが適任者が見つからず、実験計画にずれが生じたため。また、学会参加も学内の業務と重なり断念したため。
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次年度使用額の使用計画 |
【HPV感染における細胞受容体候補の機能解析】前年度に同定した細胞因子のノックダウンを行い、HPV感染プロセスにおける分子機能を解析する。【HPV感染過程および発がんに関わる細胞因子の網羅的解析】新規に同定された細胞因子がHPVの感染過程および発がんに関わる可能性をsiRNAライブラリーや遺伝子発現ベクターを用いて解析する。 【HPV感染過程の解明】ハプロード細胞であるHAP1を用いてジーントラップ法でHPVの細胞侵入に関わる細胞因子を同定する。レポーター遺伝子を発現するシュートタイプレンチウイルスを作製し、そのウイルスを用いて、ジーントラップHAP1細胞ラブラリーの作製を進め、次に、そのライブラリー細胞でチミジンキナーゼ遺伝子(TK)を発現する組換えHPVに感染させ、ガンシクロビルでHPVの感染に対する体制細胞を選択し、遺伝子解析によりHPV細胞感染に必須な遺伝子を同定する。
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