研究実績の概要 |
子宮内膜症由来の卵巣癌は特定の組織型を示し、特に高頻度にみられる明細胞癌は、化学療法に抵抗性を示し予後不良である。近年 CD44は癌幹細胞マーカーとして注目され、そのバリアントアイソフォー ム(CD44v)にはROSに対する抵抗性を亢進させる機能があり、癌治療抵抗性に寄与していることがわかってきた。我々は、すでに明細胞癌において高頻度にCD44v9が発現することを明らかにしてきた。今回、CD44v9の発癌や抗癌剤耐性獲得への関与を解明し、新たな分子マーカーとしての血清診断と新たな分子標的治療を構築することを目的として研究を行ってきた。子宮内膜症や子宮内膜症由来の明細胞腺癌において、このCD44v9とその下流遺伝子の発現等を調べることで、これらが発癌に関与していることを確認するだけでなく、将来的に血清学的手法を用いた発癌の予知が可能となり得る。また、これまでの報告を再検討すると、明細胞癌の治療の標的となり得る遺伝子・蛋白発現異常として、PIK3CA,ARID1A, ZNF217,mTOR,PTEN,HIF-1α,VEGF,HNF-1β,EGFR等が挙げられる。これらは主に、細胞 CD44v9 は細胞膜上のxCTと結合し、還元型グルタチオン(GSH)の生成を促進しでROS抵抗性を高めることで、治療抵抗性を惹起し、また悪性細胞の生存・増殖を誘導する。今回の研究で我々はxCT特異的阻害剤であるスルファサラジン(炎症性腸疾患や関節リウマチにおいて臨床応用されている)を用いる。本薬剤の悪性腫瘍に対する治療可能性を考慮した研究は未だ無く、明細胞細胞株における治療効果を検討することは、新たな治療の確立に寄与し極めて有意義と考える。
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