研究課題
明細胞癌の卵巣癌全体に占める割合は、欧米での5%に対して、本邦においては23%を占めていて漿液性に続く2 番目に多い発生頻度である。さらに、明細胞癌は、抗癌剤抵抗性で転移浸潤能が高く、卵巣癌全体の中でも最も予後が悪い。以上のことより、明細胞癌の早期発見のための有用なマーカーの開発が急務である。我々は組織中のHNF-1β 遺伝子発現とその抗がん剤耐性惹起機序を証明してきたが、最近、セリンプロテアーゼインヒビターの一つであるTissue factor pathway inhibitor 2(TFPI2)が、卵巣癌の中で明細胞癌のみに多く発現していることが報告された。TFPI2は、妊婦の胎盤に特異的に発現するタンパク質分解酵素阻害因子である。卵巣癌患者血清の血清HNF とTFPI2 濃度を測定することで、明細胞癌に特異的に上昇するかを検証するとともに、早期発見および進行再発との相関について解明を目指した。液体窒素に保管されている血清サンプルで、TFPI2 はUscn Life Science Inc.のELISA キットを用いて測定し、CA125 はPhoenix Pharmaceuticals 社のELISA キットを用いて測定した。明細胞癌は内膜症性嚢胞からの癌化が疑われている。現在の腫瘍な卵巣癌腫瘍マーカーはCA125であるが、内膜症性嚢胞でも陽性となる。そのためCA125による明細胞癌の検出は難しい。本研究では、TFPI2が内膜症性嚢胞では陰性で、明細胞癌では陽性である傾向を認めた。癌化の早期発見マーカーとして有用であると考えられた。今後は、他の良性疾患や妊娠における値の変動についての検討が必要である。
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Plos One.
巻: 11 ページ: e0165609
10.1371/journal.pone.0165609