研究課題/領域番号 |
26462535
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
井箟 一彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60303640)
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研究分担者 |
近藤 稔和 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)
馬淵 泰士 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80382357)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / ケモカイン / 腫瘍微小環境 / 腫瘍免疫 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
卵巣癌は腹膜播種という進展形式をとる予後不良な疾患の一つである。近年癌微小環境の構築におけるケモカインシステムの関与が明らかになってきた。本研究では、ケモカインの1つであるフラクタルカイン(CX3CL1) 及びそのレセプター (CX3CR1)に着目し、卵巣癌腹膜播種におけるCX3CL1-CX3CR1システムの役割を検討した。 本年度は、宿主におけるフラクタルカインシステムの機能解析のためCx3cr1-/- (KO)マウスを用いて、マウス卵巣癌細胞株であるID8細胞(5x106個/マウス)を野生型C57Bl/6 (WT)及びKOマウスに腹腔内移植し、腹膜播種の程度、生存率及び腫瘍関連分子の発現を検討した。ID8細胞をWTおよびKOマウスに腹腔内移植後79日目では、WTマウスに比べてKOマウスの腫瘍形成数,腹水量が有意に減少した(P=0.001,P=0.001)。生存期間はWTマウスに比べてKOマウスで有意に延長した (中央値;101日 vs. 94日, P<0.001)。腹膜播種腫瘍組織の免疫組織学的検討ではWTマウスに比べてKOマウスにおいて腫瘍内に浸潤するマクロファージの減少を認めた。またKOマウスではMMP-2,TGF-β産生細胞の減少を認め、免疫二重染色にてこれらの産生細胞は腫瘍内に浸潤するマクロファージであると判明した。以上より、宿主のCX3CR1欠損により腹膜播種の進展は抑制されることを証明した。本研究により、腫瘍細胞から分泌されるフラクタルカインが、受容体を発現するマクロファージの腫瘍微小環境内への動員に関与し、浸潤マクロファージがMMP-2やTGF-βを産生するtumor-associated macrophage (TAM)として卵巣癌進展に有利な環境を作りだすことが示唆され、フラクタルカインシステムに対する標的治療の可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノックアウトマウスを用いた機能解析が順調に進み、フラクタルカインの卵巣癌微小環境における役割が判明し、新知見を得られた。さらにもう1つのケモカインCCL5/CCR5システムの解明への同様の実験への基盤も作成できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、同様のノックアウトマウスモデルの系を用いて、もう1つの我々が直目しているケモカインシステムCCL5-CCR5の卵巣癌進展と腫瘍微小環境における機能解析を行う予定である。さらに、このようなシステムがヒトにおいても同様に存在し、標的治療のターゲットになり得るかどうかを検討するため、学内倫理委員会承認の下、ヒト卵巣腫瘍の手術検体を用いて,卵巣腫瘍組織における上記ケモカインシステムの発現を免疫組織染色およびRT-PCRにて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、主に既存の試薬を用いて概ね順調に実験が遂行できたため、予定より消耗品の費用を抑えることができたため
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、マウスの購入や新たな試薬や抗体の購入など、より多くの消耗品の費用が見込まれ、また国際学会での発表も予定しているので、平成27年度分として請求した助成金と合わせて使用する計画である。
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