研究課題/領域番号 |
26462536
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
江本 精 国際医療福祉大学, 臨床医学研究センター, 教授 (80258540)
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研究分担者 |
根岸 洋一 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (50286978)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 血管ニッチ / 子宮癌肉腫 / ナノキャリア / ドラッグデリバリーシステム / バブルリボソーム / 血管新生 / 超音波 |
研究実績の概要 |
がん幹細胞(Cancer Stem Cell)の追求は、将来のがん治療を根本的に大きく変動させる可能性を秘めている。本研究では発生学的に婦人科悪性腫瘍の主体であるミューラー管由来癌のがん幹細胞を追求し、新たな治療法を創案するのが目的である。我々はこれまでに子宮に発生するミューラー管悪性腫瘍に注目し、血管新生とがん幹細胞の追求を行ってきた。我々が過去に樹立したヒト子宮癌肉腫株FU-MMT-1(Emoto M. Cancer 1992)を用いてCD133を表面マーカーとして同腫瘍の癌幹細胞集団を選別することにより、初めて本腫瘍のがん幹細胞集団の同定に成功した(Stem Cells, 2011)。 本研究では同腫瘍内のがん幹細胞が構築する未分化な血管新生域(血管ニッチ)を標的とした治療を開発する研究を行っている。共同研究である東京薬科大学の研究グループが開発したナノバブルリボソームはがん幹細胞の血管内皮細胞に接着するとリボソームの被殻が破裂して内包された造影ガスが放出される機構であり、これまでの過程ではその放出レベルの調整を行ってきた。 同時に、血管ニッチを標的としたより至適ながん血管新生阻害に到達するために、研究協力として明治大学理工学部のドラッグデリバリーシステム開発班との長年にわたるコラボレーションを継続し、悪性度の高い本腫瘍の腫瘍血管のheterogeniety(異質性)を意識した創薬を行ってきた(Emoto, M., et al. Anticancer Res, 2015) (Aizawa, M, Emoto, M., et al. Advances in Bioinspired and Biomedical Materials, 2017)。腫瘍血管のheterogeniety(異質性)を意識したことは革新的なステップであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々が過去に樹立したヒト子宮癌肉腫株FU-MMT-1(Emoto, M., et al. Cancer 1992)を用いてCD133を表面マーカーとして同腫瘍の癌幹細胞集団を選別することに成功したが(Batsuren, C, Emoto, M., et al. Stem Cells 2011)、本研究で必要性の高いとされるより高度な血管新生能および血管ニッチを有するFU-MMT-1幹細胞サブクローンの選別にやや時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイの研究成果も参考にして絞り込み、血管ニッチに富むより至適な子宮癌肉腫FU-MMT-1株のがん幹細胞サブクローンを選別する。また、がん細胞が作り出す腫瘍血管のheterogeneityを意識した研究成果(Emoto, M., et al. Anticancer 2015) (Advances in Bioinspired and Biomedical Materials,2017)を参考にして上記選別に新しいアイデアを注入する。
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次年度使用額が生じた理由 |
がん幹細胞集団の中でも、血管ニッチを豊富に含有するがん幹細胞集団を絞り込むという作業は高い技術レベルを要する。さらにその永続性の獲得についても創意工夫が必要であった。また、ドラッグキャリアの調節も想定以上にハイレベルな条件が必要となることが判明した。従って、がん細胞幹細胞集団選別の培養条件等の調整レベルが予定した以上に未到達となったため、次の実験ステップへの移行が不十分であった。次年度はこれらの調整をより円滑に効率的に推進していく予定である。
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