本研究では、新しい薬剤耐性遺伝子スクリーニング法を用いて、卵巣癌細胞株における薬剤耐性遺伝子の同定を試みることを目的とする。 第一段階として、卵巣癌の中で最も多くを占める代表的な組織型である漿液性腺癌の細胞株を選択し、CMVプロモーターが挿入された細胞プールである、transposon tagged cellを作成した。卵巣癌治療において治療薬剤として標準的に用いられるパクリタキセルとカルボプラチンを選択し、これを添加した培地のtransposon tagged cellより、薬剤耐性コロニーの作成を目指した。 次の段階として、卵巣癌のその他の代表的組織型である明細胞腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌の細胞株に対し、上記と同様の手順(システム)を用いて、transposon tagged cellの樹立を試みた。こちらについても同様に、パクリタキセルとカルボプラチンを添加した培地のtransposon tagged cellから薬剤耐性コロニーの作成を目指した。 また、卵巣癌治療においてセカンドライン以降に用いる各種薬剤や治療上有望とされている新規分子標的治療薬剤についても選定作業を行い、条件設定を試みた。 本研究の成果として、薬剤耐性遺伝子スクリーニングの実施のための薬剤耐性コロニーの作成と基礎的なデータを得ることができた。また実験系の条件設定につき、新たな検証を行うことができた。 しかしながら、卵巣癌各種組織型由来の細胞株を用いたtransposon tagged cellの樹立に際しては、導入効率が予想より低く安定した樹立が困難であり、細胞株によっては本手法の適用に関して課題を残した。
|