平成29年度は、昨年度までの成果を元に交付申請書の計画に従い研究を行った。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染とヒトゲノムへの組込みが発症原因であることが確定している。本研究は、HPV組込み部位の塩基レベルにおける同定と組込まれたウイルス遺伝子発現制御機構の解析により、HPV組込みが駆動する子宮頸がん発症の分子機構を解明することを目的としている。次世代シーケンス解析とゲノムキャプチャー技術を組み合わせた方法により、HPV陽性細胞におけるそれぞれのHPV組込み部位を塩基レベルで同定した。この結果を元にHPV組込み部位周辺領域のヒトゲノム側、HPVゲノム側のDNAメチル化状態をBisulfite sequencing法で解析した。その結果、元のDNAメチル化レベルの状態に関わらず、HPV 組込みが起きたアレルでは、ヒトゲノム側、HPVゲノム側の両方のメチル化レベルが低い状態となっているグループ、あるいは反対にメチル化レベルが高い状態となっているグループの二つの状態が観察された。この結果からHPVから染色体に組込まれることにより、ヒトゲノムを含めた結合部位周辺DNAのエピゲノム状態の改変が起きていることが明らかとなった。さらに、HPV陽性細胞におけるHPV組込みに由来するウイルス遺伝子であるE6とE7の遺伝子発現量とHPV DNAの組込みコピー数を定量し、HPV 1コピー当たりのウイルス遺伝子の発現量を解析したところ、細胞株ごとにウイルス1コピー当たりの発現量には差が認められたが、DNAメチル化状態との相関は認められなかった。しかし、それぞれの株においてウイルス遺伝子mRNAの安定性に違いが認められる可能性が示唆される結果を得た。
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