研究課題
1)HPV感染と腫瘍性病変との関連子宮頸部前がん病変および癌組織に感染しているHPV型判定を行う場合、頸部擦過細胞を検体として利用しているが、実際には病変を形成していない一過性のHPV感染も検出されてしまうため、結果として複数のハイリスクHPVのDNA型が検出されることも多い。結果として病変形成に関わった真のHPV型の同定が困難である。そこで、ホルマリン固定組織標本検体(FFPE)からDNAを抽出し、ウイルスDNAの塩基配列を決定して病変と関連のあるハイリスクHPV型を同定することを試みた。そして既存の方法による型判定の方法との違いを明らかにして、臨床的有用性を検討した。我々の解析では、HPV型判定にあたり、材料と方法により検出されるHPV型が異なることがわかった。病変を組織学的に確認できるFFPEを用いた方法が最も型判定において信頼される方法とされるが、ホルマリン固定により、そのDNAの質の劣化に起因してHPV型検出頻度が下がることが危惧される。一方、擦過細胞を用いたDNAでは病変とは関連のない一過性感染のHPVを検出している可能性がある。HPVワクチンの効率を解析するうえで、HPV型判定法は極めて重要であるが、その方法によりHPVワクチン効率の評価が変わる可能性が示唆された。2)頸管粘液中に発現する分子の解析CIN(前癌病変)、子宮頸癌患者から腟分泌物を採取し、約2800種類が搭載されているヒトmiRNAアレィにてスクリーニングをかけたところ、病変の違いにより、33種類のmiRNAの発現に有意な差があることがわかった。同様に病変の違いがある患者血清を用いたスクリーニングでは24種類が抽出された。血清と分泌物ともに変化が認められたものは17種類みつかった。miRNAはあらたなバイオマーカーとして有用である可能性があり、その正当性を今後さらに評価してゆく。
2: おおむね順調に進展している
CINのHPV感染状況についての解析は、順調に進んでいる。腟内分泌物の生体内分子の検索についてはmiRNAの解析は順調に進んでいる。腟内分泌物のサイトカインの検索も網羅的に行っており、実験系としては順調に構築されている。アレイの結果で選択されたmiRNAがサイトカイン発現異常を引き起こす可能性については、データベース検索上では示唆されているので、その実証に向けて更なる解析を行う予定である。
実験を速やかに遂行するためにはマンパワーも動員する必要がある。今年から大学院生が新たに入学してきたので、すみやかに実験開始ができるように準備を進める。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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