研究課題/領域番号 |
26462544
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 聡子 東京大学, 医学部附属病院, 研究員 (40609872)
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研究分担者 |
毎田 佳子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (20397219)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 卵巣がん / 薬剤耐性 / 分子標的 / 次世代shRNAライブラリー / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
薬剤耐性再発卵巣がんにおける新たな治療標的を同定するために、平成26年度までに、次世代shRNAライブラリーを用いた機能的スクリーニングを行った。具体的には、卵巣がん治療のキードラッグであるプラチナ製剤に対する耐性を獲得した再発卵巣がんの細胞株2種にshRNAライブラリーを導入し、シスプラチン存在下と非存在下で培養した細胞を回収し、次世代シーケンシングを行った。当該年度には、このシーケンシング結果を解析した。オープンソースの解析ツールRとBioconductorを用いて、データの正規化やクラスタリングを行い、シスプラチン存在下で有意に減少している(Loss-of-functionで細胞が死滅する)shRNAおよび標的遺伝子をリストアップした。2種類の細胞株それぞれについて行い、共通する遺伝子をリストアップした。 併行して、オープンソースのデータベースから臨床検体のマイクロアレイによる遺伝子発現データを取得し、解析を行った。データベースの中で、漿液性腺癌でプラチナ製剤に対する感受性が明らかなデータセットを選択し、耐性癌と感受性癌の遺伝子発現を、上記のRとBioconductorを用いて解析した。複数のデータセットで同様の解析を行い、プラチナ耐性に関する遺伝子のモデリングを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は平成26年度に産休・育休を取得し、平成27年度に育休から復帰と同時に研究施設を異動となった。新しい職場での環境整備に予測した以上の時間がかかった。具体的には、ウェットな実験の環境整備が遅れている一方で、バイオインフォマティックスについては当初予定していた以上に進捗している。全体としてはやや遅れた状態である。
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今後の研究の推進方策 |
今後スクリーニング解析結果と、オープンソースで取得した臨床検体の遺伝子発現を解析した結果を併せて、プラチナ製剤耐性の卵巣がんの治療標的となる遺伝子を同定する。複数の薬剤耐性卵巣がん細胞株を用いて、shRNAやsiRNAにより、これらの遺伝子の発現を抑制し、プラチナを含めた各種の抗癌剤に対する感受性を確認する。また、これらの遺伝子の発現抑制による感受性獲得の機序を調べるため、スフェロイド形成能、がん幹細胞マーカー、および各種シグナリング経路の発現を調べ、作用点を推測する。 併行して、オープンソースから取得した臨床検体のデータを用いて、プラチナ耐性およびがん幹細胞に関するモデリングを行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、産休・育休の取得と、育休からの復帰と同時に研究施設を異動したことにより、研究環境の整備に時間がかかっている。当該年度は、ウェットな実験環境については整備を進めるにとどまる一方、オープンソースの解析ツールを用いてバイオインフォマティックスを進めてきたが、予算の大半はウェットの実験にかけることを予定していた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度からはウェットの実験が行える見通しであり、使用額は当該年度に予定していた実験を遂行するのに用いる。
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