研究課題
本研究ではまず7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7)の急性中耳炎に対する本邦での影響を評価すべくPCV7が定期接種となっていた2013年4月から2013年10月までの間に0-3歳児の急性中耳炎児の中耳貯留液から分離された肺炎球菌の菌株の収集を行い、その細菌学的特徴の解析を行った、平成27年度までに収集した180株の菌株の肺炎球菌確認試験を行い、肺炎球菌であることが確認された176株に対して微量液体希釈法による薬剤感受性測定、莢膜膨化反応による血清型の確認を完了した。その結果、176株中ペニシリン感性肺炎球菌は45.5% 、ペニシリン中等度耐性肺炎球菌は42.6%、ペニシリン耐性肺炎球菌は11.9%の内訳であった。最も多くみられた血清型は19A(27.3%)で、15A(14.2%)、3(11.9%)と続いた。PCV7でカバーされる血清型は4.5%で、7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)でカバーされる菌株は44.9%だった。この結果から本邦の小児急性中耳炎においてPCV7導入による菌交代現象が起きていることが考えられた。またPCV7にもPCV13にも含まれない血清型15Aはすべての菌株がペニシリン非感性株かつ多剤耐性肺炎球菌であったこともわかり、今後のPCV13導入による菌交代現象による血清型15Aの増加によって難治性急性中耳炎が増加することが懸念された。以上の結果はPediatric Infectious Disease Journal誌において報告を行った。平成27年度はさらにmultilocus sequence typing(MLST)による菌株間の遺伝的近縁性の解析と質量分析による解析を開始しており、これらの研究は引き続き平成28年度も継続して行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度までに予定していた菌株の収集、薬剤感受性測定、血清型解析は順調に目的を達成し、その成果をPediatric Infectious Disease Journal誌にて報告することができた。平成27年度から開始した質量分析による解析は当初の予定通り平成28年度にまたがって解析を継続していく予定である。また、平成28年度に開始予定であったMLSTによる分子疫学的解析や質量分析に関しては予定を前倒して開始した。
MLSTによる分子疫学的解析に関しては平成28年度中に解析完了の目処が立っている。質量分析に関しては血清型、薬剤感受性、MLSTのST型、などのグループ分けを行って質量分析を行い、解析を進めていく予定である。
今年度の研究が効率的に進行したことに伴い生じた未使用額の他、次年度にまたがって継続的に行う予定である質量分析に関する試薬購入費用の一部が未購入であることに伴って生じたものである
次年度にまたがって行う予定の質量分析の試薬購入に用いる他、平成28年度請求額と合わせて当初計画していた平成28年度の研究(MLSTによる分子疫学的解析)実施に必要な試薬などに使用する予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
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