研究課題
本研究ではまず7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7)の急性中耳炎に対する本邦での影響を評価すべくPCV7が定期接種となっていた2013年4月から2013年10月までの間に0-3歳児の急性中耳炎児の中耳貯留液から分離された肺炎球菌の180株を収集し、そのうち菌株の肺炎球菌確認試験を行って、肺炎球菌であることが確認された176株に対して平成27年度までに微量液体希釈法による薬剤感受性測定、莢膜膨化反応による血清型の確認を完了している。平成28年度はさらにmultilocus sequence typing(MLST)による菌株間の遺伝的近縁性の解析と質量分析による薬剤感受性の解析を行った。MLST解析では血清型15Aの肺炎球菌においてシークエンスタイプ(ST)63が84.0%を占め、新型STの1株を除く全株がST63を中心としたクローナルコンプレックス63に属するSTであることが判明した。このことから本邦における小児急性中耳炎症例の中耳貯留液から分離される血清型15Aの菌株は遺伝的近縁性の高い菌株であることがわかった。ST63を中心としたCC63に属するSTは多剤耐性肺炎球菌にみられるSTとして知られており、血清型15Aは新しく導入されている13価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)でもカバーされないためPCV13導入後には血清型15Aによる難治性急性中耳炎の増加が危惧された。質量分析による解析では薬剤感受性ごとにグループ分けを行った肺炎球菌のマススペクトルの対比を行ったが、グループ間での有意なマススペクトルの相違を示すことはできず、より微細な肺炎球菌の差異を検出しうる質量分析法の確立が今後の課題と考えられた。以上の研究成果について平姓28年度に第90回日本感染症学会学術講演会ならびに第117回日本耳鼻咽喉科学会学術講演会において発表した。
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