研究課題/領域番号 |
26462550
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
牛尾 宗貴 東京大学, 医学部附属病院, 臨床登録医 (70361483)
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研究分担者 |
山下 真司 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40239968)
鈴木 光也 東邦大学, 医学部, 教授 (50302724)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 前庭 / 老化 / 電気刺激 / 前庭動眼反射 |
研究実績の概要 |
末梢前庭器の老化とその抑制をテーマに、老化動物を用いて形態学的・機能的研究を行っている。機能的評価のためにビデオ記録装置を構築し、動物の眼球運動を記録できるシステムを使用している。本システムでは眼球の回旋は検知できないが、XY方向の眼球運動を精確に記録できる。本来は眼球の瞳孔と強膜のコントラストを判断して眼球運動を判定する仕組みであるが、モルモットに最適化した条件で使用している。デジタルカメラ対応の構成としており、眼球運動と電気刺激自体の同時記録ができるよう構築したシステムを使用している。 末梢前庭器の電気刺激にあたっては、刺激機、アンプ、制御ソフト、非常に微小な針電極で構成されたシステムを用いている。この構成では刺激の強度ならびに形を自在にコントロールすることができる。現在、最適な刺激条件となる刺激の強度ならびに形は、過去の論文で示されている前庭神経節細胞から記録されたデータを参考にソフト上で作成し、刺激器を用いている。 対象となる動物に対する手術法は安定した状態にあり、両側末梢前庭機能廃絶モデル動物は両側迷路破壊術により作成している。末梢前庭器への電気刺激は中耳を開放して電極を留置することにより行っている。具体的には側頭骨上面を明視下において顕微鏡下で前庭神経節に電極を刺入し、電気刺激の至適条件を探っている。報告されている人工前庭器のように眼球運動をコントロールすることはできないが、電極の留置位置や電流の大きさを細かく調整し、モルモットの各個体に応じて眼球運動を生じさせられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
加齢マウス・末梢前庭機能廃絶マウスの準備については、カロリー制限食(生後2か月より26%制限)を投与した加齢マウス(10ヶ月齢)と通常食を投与した加齢マウス(10ヶ月齢)それぞれ15匹ずつの末梢前庭器(半規管、耳石器)と前庭神経節の観察(細胞数カウントなど)を行っている。また、通常カロリー食を投与した加齢マウス(N群)、カロリー制限食(生後2か月より26%制限)(CR群)、通常カロリー食+レスベラトロール投与群(NR群)の末梢前庭器(半規管、耳石器)と前庭神経節の観察(細胞数カウントなど)を行っている。 マウスの前庭機能評価については、すべての群を対象としている。LabChartを核とするvideo HITシステムを用いてマウスの末梢前庭機能の測定を試みている。末梢前庭機能は外側半規管を含む平面の前庭動眼反射(VOR)ゲインを用いて評価している。 OCTによるマウス(生体)の形態学的評価については、すべての群を対象とする。研究分担者(山下真司)のグループと共同で、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を用いてマウス(生体)の末梢前庭器を生後4ヶ月、8ヶ月、12ヶ月の時点で観察し、個体内ならびに個体間で比較している。静的評価は十分可能となっているが、動的評価に困難が生じている。 前庭リハビリテーションについては、専用の固定具にマウスと回転テーブルを固定し、一側末梢前庭機能廃絶群では廃絶側向きに、両側末梢前庭機能廃絶群では左右両側向きに回転させ、前庭リハビリを行う。いまだ準備段階にある。 前庭電気刺激については、専用の特注電極先端を水平半規管膨大部近傍に埋め込み、ケーブルを皮下に通してコネクターは皮膚に固定する。LabChartで作成した波形を刺激条件とし、刺激装置経由で週1回、30分間の電気刺激を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
I. 加齢マウス・末梢前庭機能廃絶マウスの作成継続:現在観察している動物に加え、前庭リハビリ群(VR群)、前庭電気刺激群(VS群)、一側末梢前庭機能廃絶+前庭リハビリ群(uni-VR群)、両側末梢前庭機能廃絶+前庭リハビリ群(bi-VR群)、一側末梢前庭機能廃絶+前庭電気刺激群(uni-VS群)、両側末梢前庭機能廃絶+前庭電気刺激群(bi-VS群)をそれぞれ15匹飼育し、12ヶ月齢まで加齢させる(飼育中にそれぞれ5匹ずつ死亡すると予想)。 II. マウスの前庭機能評価:すべての群を対象とする。比較的安価に組み上げたシステムであることもあってか現時点ではなかなか安定したデータを得られずにいる。測定機器などの精度やマウスの固定方法に工夫を加え、確実に測定できるようにする。 III. OCTによるマウス(生体)の形態学的評価:すべての群を対象とする。動的評価が可能なように技術を確立させようと試みているが、困難な状況にある。さらに細かい点での検討と修正を続ける。 IV. 前庭リハビリテーション:専用の固定具にマウスと回転テーブルを固定し、一側末梢前庭機能廃絶群では廃絶側向きに、両側末梢前庭機能廃絶群では左右両側向きに回転させ、前庭リハビリを行う。リハビリ用の刺激を安定して行えるように準備完了させる。 V. 前庭電気刺激:専用の特注電極先端を水平半規管膨大部近傍に埋め込み、ケーブルを皮下に通してコネクターは皮膚に固定する。LabChartで刺激電流を作成して刺激装置経由で週1回、30分間の電気刺激を行う。実際に使用する動物に対して刺激を行っているが、生じる眼球運動については個体間の差が大きいため、安定した刺激が行えるよう細かい点について修正を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れにより実験動物の購入、消耗品の購入が、さらに次年度に後ろ倒しとなったため。 加齢マウス・末梢前庭機能廃絶マウスの作成については、予定していた動物の準備が中途にあるため。マウスの前庭機能評価については、LabChartを核とするvideo HITシステムを用いてステップ刺激によるマウスの末梢前庭機能(水平方向のVORゲイン)測定の装置はほぼ構築されているが、精度の点で問題があり、さらに修正が必要であるため。OCTによるマウス(生体)の形態学的評価については、今後は主に消耗品が必要となる見込みである。前庭リハビリテーションについては、リハビリ用の回転テーブルの準備が遅れているため。前庭電気刺激については、刺激に必要なシステムなほぼ構築されている。今後は消耗品のみが必要となる見込みである。
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次年度使用額の使用計画 |
加齢マウス・末梢前庭機能廃絶マウスの作成については、現在飼育している動物に加え、まだ飼育していない動物を飼育する。マウスの前庭機能評価については、測定可能となるように準備完了させるが、今後は精度を高めるための機器の購入資金と消耗品が必要となる見込みである。OCTによるマウス(生体)の形態学的評価については、動的評価が可能なように技術を確立させるが、今後は消耗品のみが必要となる見込みである。前庭リハビリテーションについては、リハビリ用の刺激は可能となっており、今後は消耗品のみが必要となる見込みである。前庭電気刺激については、実際に使用する動物に対して刺激を試みているが、今後は消耗品のみが必要となる見込みである。
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