本研究では、大脳性平衡機能に臨床応用可能な検査法と解析方法の確立を目指している。まず本年度の成果として、病棟や一般外来でも利用可能な可動型のNIRS-EEGシステムの構築を行うため、ポータブル光脳機能イメージング装置であるLightnirs(ライトニルス)による記録を試行した。試用したライトニルスは253mmx68mmx222mmのサイズであり、重量は1600gと軽量であった。前庭刺激としては回転刺激を用いた。専用のキャリーバック内にライトニルスを入れて、回転刺激装置の一部に固定することで、左右回転刺激(加速減速3degree/sec/secを各20秒間、等回転速度60degree/secを100sec)中の脳血流を安定して記録することができた。健康成人18名に対して両側側頭頭頂接合部(Temporo-Parietal Junction: TPJ)を中心に脳血流16チャンネル、皮膚血流2チャンネルから記録した。得られたデータは無線通信で解析用パソコンに転送され、オンラインで解析を行われた。左右方向と加速減速の計4刺激条件に対して有意に賦活化したTPJ領域をNIRS-SPMを用いて解析した。これらの研究成果の一部は、第29回バラニー学会(国際学会)、第75回日本めまい平衡医学会などで報告した。本年度の研究成果により、小サイズ・軽量化されたライトニルスを用いることは、専用の検査室内に限定されていた検査環境を大きく変化させ、日常のめまい診療に応用することが可能となると思われた。
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