研究課題/領域番号 |
26462554
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
杉本 寿史 金沢大学, 大学病院, 講師 (20547179)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | M細胞 |
研究実績の概要 |
乳幼児の難治性反復性中耳炎では、患児の免疫能の弱さが最大の発症要因であると考えられている。申請者らは、近年我国では集団保育を受けている乳幼児の多くが咽頭扁桃に薬剤耐性病原細菌を保菌していることを報告してきた (Otol Neurotol 2002, J Clin Microbiol 2008, Int J Pediatr Otorhinolaryngol 2010)。しかし同じように多量の薬剤耐性菌に暴露されていても、急性中耳炎を全く発症しない児もいれば、反復性中耳炎となり頻回の通院治療を余儀なくされる児もいる。M細胞はパイエル板と鼻咽頭関連リンパ組織(Nasopharynx-Associated Lymphoid Tissue;NALT)において病原微生物等の外来抗原の取り込みを行い、粘膜免疫に重要な役割を担っているが、申請者はこのM細胞がその重要な内的要因であると考えている。 「咽頭扁桃におけるM細胞の量的あるいは質的状態のよくない患児では抗原の取り込み能が減少し、初期免疫の機能が低下するために上気道難治性感染症および反復性中耳炎をひきおこしやすい」という仮説の立証をおこなう目的で研究をすすめている。 平成26年度は、ヒトのワルダイエル輪におけるM細胞の発現について検証した。鼓膜チューブ留置術およびアデノイド切除をおこなった反復性中耳炎罹患児のアデノイド組織と、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状改善目的にアデノイド切除を行ったアデノイド組織を材料に比較検討した。ヒト咽頭扁桃における成熟したM細胞のマーカーとして近年GP2が報告されているが、このマーカーを用いてアデノイド上皮細胞におけるM細胞発現率を免疫組織学的手法にて解析した。現在その発現率に有意差があるかどうかを統計的に解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトのワルダイエル輪におけるM細胞の発現について免疫組織学的手法にて解析を行っている。鼓膜チューブ留置術およびアデノイド切除をおこなった反復性中耳炎罹患児のアデノイド組織と、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状改善目的にアデノイド切除を行ったアデノイド組織をそれぞれ20検体ずつ解析中である。まだ現時点で検体が数例ずつ足りないために統計的解析ができていないが、実験系は確立しており、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1.反復性中耳炎罹患児のアデノイド組織におけるM細胞の発現度と閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状改善目的にアデノイド切除を行ったアデノイド組織におけるM細胞の発現度の違いを統計的に解析する。 2.次に、マウスのNALTの分化度について解析する。M細胞は幹細胞から分化する課程で、様々なマーカーを発現することが知られている。したがって、そのマーカーを用いることでM細胞の分化度を測ることが可能である。RANKL欠損マウスではM細胞がほとんどみられないこと、また全身性にRANKLを投与することでM細胞の欠落が回復することが報告されている。つまり、M細胞ノックアウトマウスとして用いることができる。(2009 J.Immunol)。そこで、RANKL欠損マウスにRANKLを全身性に投与しマーカーを経時的に検出することでそのマウスのNALTの分化度について解析する。 3.マウスの上気道感染モデルを確立し、NALTのM細胞の分化度の違いにより上気道感染の程度に違いがでるかどうか解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りの額を使用したが、17331円未使用となった。 未使用となった17331円を次年度の研究で有意義に使う予定としたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験をすすめるために免疫染色 抗体・試薬、その他の組織学用試薬を購入する。またマウスの購入と維持を行う予定である。次年度使用額(17331円)はマウスの維持費にあてる予定としている。
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