研究実績の概要 |
申請者らはこれまで、乳幼児の反復性中耳炎の研究を行ってきた。我が国では近年集団保育を受けている乳幼児の多くが咽頭扁桃に薬剤耐性病原細菌を保菌していることを明らかにした (Otol Neurotol 2002, J Clin Microbiol 2008, Int J Pediatr Otorhinolaryngol 2010)。しかし同じように多量の薬剤耐性菌に暴露されていても、急性中耳炎を全く発症しない乳幼児もいれば、反復性中耳炎となり頻回の通院治療を余儀なくされる乳幼児もいる。この反復化の最大の要因は患児の免疫能の弱さであると考えられている。しかし、その免疫の弱さが何に起因するものなのかは明らかにされていない。一方でなぜ治癒にいたるのか、そのメカニズムは解明されていない。そこで我々は反復性中耳炎に罹患する乳幼児におけるM細胞の発現度および取り込み能がその免疫能の弱さの原因であると仮定し、その量的質的検証を行った。 鼓膜チューブ留置術およびアデノイド切除をおこなった反復性中耳炎罹患児のアデノイド組織と、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状改善目的にアデノイド切除を行ったアデノイド組織を材料に検討した。ヒト咽頭扁桃におけるM細胞のマーカーとしてこれまでGP2、Clusterin, ClassⅡβ-tubulin、Ck20が報告されている。これらのマーカーを用いて、アデノイド上皮細胞に対するM細胞の割合を解析し、量的因子が反復性中耳炎発症に関連しているか解析した。さらに切除標本を用いて初代培養上皮細胞を作成し、蛍光微小粒子を用いた抗原取り込み機能の解析をおこなうことで、機能的因子が疾患に関連しているか解析した。
|