研究実績の概要 |
平成28年度は、前年度までの検討をさらに発展させ当教室が管理する日本人難聴患者DNAバンク(約6500例)のうち、インベーダー法を用いた日本人難聴患者に高頻度に認める遺伝子変異のスクリーニング検査を実施しても原因遺伝子変異の同定に至らなかった症例のうち、常染色体優性遺伝形式(もしくはミトコンドリア遺伝形式)をとる難聴家系1,000例を対象にKCNQ4遺伝子変異の解析を実施した。発端者に変異が認められた場合には、家族サンプルを用い直接シークエンス法によるKCNQ4遺伝子変異の確認を行い、遺伝子型と表現型のセグリゲーションが取れていることを確認した。その結果、新規遺伝子変異を含む21変異が54家系より見出された。見出されたKCNQ4遺伝子変異のうち、c.211delC変異が最も高頻度に認められるのに対して、c.229_230insGC変異など複数家系に認めるものの非常に頻度の低い変異、また、p.W276Sなど1家系のみでしか認められない変異と頻度に大きな差異があることが明らかとなった。また、表現型に関しては、C末端付近に生じたフレームシフト変異では高音障害型の聴力像を呈することがサンプル数を増やしても確認された。C末端付近に生じたフレームシフト変異であることより、その病態はハプロイサフィシエンシーであると考えられることより、内耳におけるKCNQ4タンパク質の量が高音部の聴取に重要であることが明らかとなった。一方、中央付近の幾つかのミスセンス変異では中音域が障害される聴力像をとることより、ドミナントネガティブ変異の場合に異なる臨床像を示す可能性があることが明らかとなった。現在、研究成果を取りまとめて論文として公表を行う準備をしている。
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