研究課題
感音難聴は頻度の高い身体障害の要因であり、現在のところ根本的治療法は存在しない。種々の疾病の制御や予防医学の進歩に伴い、人類の高齢化は進み、本邦では超高齢化社会が近未来に訪れる。このような背景から、高齢者のQOL向上の医学的重要性は増している。高齢者のQOL向上の重要課題のひとつが加齢性難聴に対する対応といえる。本研究では、加齢性難聴に対する薬物治療の可能性を探索するものであり、研究代表者らが近年感音難聴治療薬として注目してきたインスリン様細胞増殖因子1(IGF1)と関連する分子の加齢性難聴における役割を解析する。本課題では、感音難聴および蝸牛障害におけるIGF1および関連する分子の役割の解析を進め、その知見を加齢性難聴に応用する。加齢に伴う聴覚機能低下の過程が異なる3系統のマウスを用い、加齢性難聴発症に関連する共通分子を探索する。平成26年度には、DAB、C57BL6 CBA/Jマウスの3系統のマウスを加齢性難聴の時期を考慮して飼育開始し、聴性脳幹反応および耳音響放射検査にて聴力をモニターし、定量的PCRにて解析する試薬などの準備を行った。平成27年5月に蝸牛組織を採取し、標的とする分子の解析を行う。IGF1受容体コンディショナルノックアウトマウス作製については、マウス作成中の段階にある。マウス蝸牛器官培養を用いた実験では、過去に報告があるIGF1受容体阻害薬について解析を行い、IGF1受容体の阻害による蝸牛内有毛細胞とラセン神経節細胞間のシナプス障害が誘導されることが確認されたが、ラセン神経節細胞神経線維に対する毒性が明らかとなった。既報の濃度から段階的に濃度を下げ、効果検証を行ったが、IGF1受容体に限定した効果は認められなかった。このため異なる2種類のIGF1受容体阻害薬の効果を検証中の段階にある。
2: おおむね順調に進展している
交付申請時の計画に基づくと75%の達成率である。基本的な条件設定は予定通りに施行しているが、想定範囲内でのばらつきといえるものである。マイクロアレイを行わず、定量的PCRを直接行う計画とした。
マイクロアレイを行わず、定量的PCRを直接行う計画としたため、3カ年での研究計画に変更は不要である。
マイクロアレイ解析を止め、定量的PCRを次年度に施行する実験計画変更を行ったため、該当する予算を次年度に使用する
定量的PCR解析を行う
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
BMC Med
巻: 12 ページ: 219
0.1186/s12916-014-0219-x
Frontiers in Pharmacology
巻: 5 ページ: 208
10.3389/fphar.2014.00208
巻: 5 ページ: 206
10.3389/fphar.2014.00206