研究課題
種々の疾病の制御や予防医学の進歩に伴い、人類の高齢化は進み、本邦では超高齢化社会が近未来に訪れる。このような背景から、高齢者のQOL向上の医学的重要性は増している。高齢者のQOL向上の重要課題のひとつが加齢性難聴の進行防止といえる。本課題では、感音難聴および蝸牛障害におけるインスリン様細胞増殖因子1(IGF1)および関連する分子の役割の解析を行い、加齢性難聴の進行防止を目的とした薬物治療に関する探索的な研究を行う。平成27年度には、加齢性難聴の発症時期、メカニズムが異なる3系統のマウス(DBA/J, C57Bl6,CBA/J)について、DBA/J:8週齢、C57Bl6:32週齢、CBA/J :64週齢での聴力機能解析として聴性脳幹反応閾値および誘発耳音響放射の計測および蝸牛からのRNA回収を施行し、一部蝸牛感覚上皮の形態学的観察を施行した。C57Bl6およびCBA/Jでは、加齢性難聴発症のタイミングにサンプルを回収できたことが確認された。DBA/J:8週齢では、蝸牛傷害が進行しており、サンプル回収時期を早める必要があると考えられた。今後、採取したRNAを用いて、標的分子の定量的解析を行うと同時に、サンプル数を増やし、RNA seqによる網羅的解析を追加する。マウス蝸牛器官培養を用いた実験では、新規に2種類のIGF1受容体阻害薬について解析を行い、容量依存性のIGF1阻害効果が確認され、ラセン神経節細胞に対する傷害が軽微な濃度設定を決定することができた。この結果に基づき、加齢性難聴発症時期でのIGF1投与およびIGF1阻害の加齢性難聴に対する影響を解析する。
3: やや遅れている
加齢性難聴の発症時期、メカニズムが異なる3系統のマウス(DBA/J, C57Bl6,CBA/J)を用いた加齢性難聴発症時期におけるIGF1および関連分子の発現変化解析については、最も長期の飼育期間を要するCBA/Jにおいて、加齢性難聴発症前の死亡が多発し、予定したサンプル数が確保できておらず、大幅に飼育動物数を増やして、聴力変化を確認中である。定量的なRNA解析については、解析に用いるサンプル回収の効率化を進めており、少ないサンプルで多くの解析が行えるように条件設定が進んでいる。また、RNA seq解析が安価に行える環境が得られつつあることから、RNA seq解析による網羅的解析を追加して行う計画に変更した。計画の根幹となる部分については、想定される範囲のトラブルに対応し、適切な予算で効果的解析が行える準備が整った。
研究最終年度である平成28年度には、当初計画通りに3系統のマウスで共通する因子から加齢性難聴発症に関与すると考えられる標的分子の絞り込みを行い、治療候補分子に関する解析を施行することができる。また、器官培養系を用いたIGF1情報伝達系解析に関する準備は完了したので、IGF1情報伝達系下流分子に関する解析を実施することができる。
RNA解析が次年度にずれこんだため
RNA解析に用いる
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Auris Nasus Larynx
巻: xx ページ: xx
doi: 10.1016/j.anl.2015.12.004
Hear Res
巻: 330 ページ: 2-9
http://dx.doi.org/10.1016/j.heares.2015.04.009