| 研究課題/領域番号 |
26462559
|
|---|
| 研究機関 | 香川大学 |
|---|
研究代表者 |
宮下 武憲 香川大学, 医学部, 准教授 (60363214)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
| キーワード | 内耳 / イメージング / 内リンパ嚢 / 血管条 / イオン輸送 / RT-PCR |
|---|
| 研究実績の概要 |
難病のひとつであるメニエール病の病態は、内耳を満たしている内リンパ液が過剰である内リンパ水腫であるが、健常では内リンパ水腫が生じないように内リンパ系が調節されている。内リンパ液が過剰になると、難聴やめまいが生じるため、聴力と平衡感覚の維持には内リンパ液の調節がきわめて重要である。この内リンパ液は、蝸牛の血管条で産生され、内リンパ嚢で吸収されると考えられている。臨床面からのアプローチとして、減塩治療における各種ホルモンや電解質の変動を2年間測定した。減塩治療により、減塩できた群ではめまいは著名に改善し、聴力も改善することが確認された。2年間の減塩治療により、血漿アルドステロン濃度が増加することも確認された。これまでの基礎研究から、内リンパ嚢において内リンパ吸収を調節している可能性のある制御因子の一つにアルドステロンがあるが、そのアルドステロンが臨床研究においても内リンパ嚢において内リンパ調節をすることでめまいや聴力が改善した可能性が示唆された。
また、分子生物学的アプローチとして、内リンパ嚢における制御系を明らかにしていくためには、LCM法を用いてラット内リンパ嚢上皮細胞からｍRNAを抽出し、リアルタイムPCRを行い、イオン輸送体のmRNA増減を調べることが必要であるが、サンプル量が微量であるためこれまでにリアルタイムPCRに成功した報告はない。そこで、LCM法の採取効率を高めるべく新たなmRNA調整方法を探索しており、条件を組み合わせることで、ラット内リンパ嚢上皮細胞よりLCM法で採取した純粋な内リンパ嚢上皮細胞由来のmRNAをもちいてリアルタイムPCRを行うことに成功した。今後、薬物投与系などの動物を用いて、mRNAの発現量を比較することで、内リンパ嚢におけるイオン輸送制御機構を研究していく予定である。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定より早く、リアルタイムPCR実験系の条件設定ができた。すなわち、LCM法の採取効率を高めるべく新たなmRNA調整方法を探索しており、条件を組み合わせることで、ラット内リンパ嚢上皮細胞よりLCM法で採取した純粋な内リンパ嚢上皮細胞由来のmRNAをもちいてリアルタイムPCRを行うことに成功した。また、並行して実施していた臨床研究であるメニエール病の減塩治療についても結果がでたため、今後の内リンパ嚢におけるイオン輸送の研究において、候補となる制御因子がさらに見つかった。また、イメージングについても、予定通り実験系を改良しながら実施している。
|
| 今後の研究の推進方策 |
これまでの臨床研究から減塩治療がメニエール病には有効であることが確認されており、減塩によるアルドステロン濃度上昇が内リンパ液の吸収を促進し、症状を改善することが推定されている。しかし、アルドステロンが内耳、内リンパ嚢に作用するかどうかは報告がない。そこで、減塩食によりアルドステロン増加したラットと、通常ラットの内リンパ嚢上皮をLCM法にて採取し、リアルタイムPCRを行い、イオン輸送体のmRNA増減を調べることで、分子生物学的に制御系を明らかにしていく予定である。また、内リンパ液を産生する蝸牛血管条、内リンパ液を吸収する内リンパ嚢において、イメージングシステムを使用し、イオン輸送制御機構を調べていく予定である。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
2月20日からの国際学会後、3日間、アメリカの共同研究先である南カリフォルニア大学医学部において共同研究を行い（学会および研究関連旅費・参加費はすべて自己負担）、そのサンプルを4月に日本に送ってもらい研究を継続する計画であり年度をまたいで研究計画があったため。
|
| 次年度使用額の使用計画 |
南カリフォルニア大学医学部において実施した共同研究でえられたサンプルを4月に日本に送ってもらい、内耳におけるイメージングを行う予定である。その時の試薬および機材に研究費を充てる予定である。
|
