研究課題/領域番号 |
26462564
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西村 忠己 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60364072)
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研究分担者 |
細井 裕司 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (80094613)
下倉 良太 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (90455428)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 補聴器 / 軟骨伝導 / 骨導 / 外耳道閉鎖症 / 伝音難聴 |
研究実績の概要 |
軟骨伝導補聴器の性能向上のため、聴力正常者を用いた軟骨伝導の音の伝わりに関する研究と試作した補聴器の効果を評価するための臨床試験を実施した。 軟骨伝導の音の伝わりを解明するため、外耳道内に水を注水し水の量に応じた閾値の変化を気導、骨導と比較した。その結果軟骨伝導では気導骨導とは異なり、軟骨の振動により外耳道内に放射される音が非常に重要であることが分かった。さらに振動子を接触させる部位で閾値の変化を見たところ軟骨に接触させることで特に中低音域の閾値が低下することが分かった。これらの結果から軟骨伝導は気導や骨導と異なり、軟骨の振動が重要であることが改めて明らかとなった。中低音域が効率的に伝わるため補聴器ではそれに応じた周波数レスポンスにする必要があることが分かった。 試作の補聴器については23名の被験者に同意をいただきその効果を評価した。そのうち外耳道閉鎖症は非骨性閉鎖8名、骨性閉鎖12名であった。いずれの被験者でも補聴器を装用することで音の聞き取り、および言葉の聞き取りの改善を認め、有効性が明らかとなった。臨床試験開始前に骨導補聴器を使用していたのは5名であったが、いずれの症例も臨床試験開始後は装着感、審美性および効果に優れた軟骨伝導補聴器を使用し、それまで使用していた骨導補聴器は使用を中断した。 軟骨伝導では圧着固定しないため、音の効率的な伝導が難しく、ゲインが不足するあるいはハウリングが生じる症例がある。ジェルを振動子に塗布することで音の伝導効率の改善と音漏れを防止することでハウリングが抑制されることを発見し、その使用方法に関する特許の申請を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床試験を通じて様々な外耳道閉鎖症例を経験することでより効果のある補聴器への改良を進めることが可能であった。その結果骨導補聴器と同等以上の効果が得られるまで開発を進めることが可能であった。さらに2014年はNHKのテレビで何度か取り上げられることで全国から多くの新たな被験者に臨床試験に参加していただくことができた。今後、それらの被験者の協力を得ることでよりよい補聴器の開発につなげていくことができる。
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今後の研究の推進方策 |
周波数レスポンスが語音明瞭度に与える影響を明らかにすることで、言葉の聞き取りの向上を目指す。臨床試験については方向感などの評価も行い、骨導補聴器と比較したときの軟骨伝導補聴器の利点を明らかにする。また各個人の補聴器の効果と耳の状態との関係を比較することであらかじめどの程度の効果が得られるか、またどのような調整が最も適しているかの指標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末近くに学会で発表を行ったが、その時に必要と考えられた経費が、事前に予想していたよりも少なかったことなどが影響した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度分の臨床試験に必要な被験者に対する謝金や成果発表に必要な旅費として使用する予定である。
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