研究実績の概要 |
先天性高度難聴の発症率は1,000人に1人の割合であり、その約半数は遺伝子の関与があるといわれている。遺伝性難聴の中でも最も頻度が高い原因遺伝子は、ギャップ結合蛋白であるコネキシン26をコードしているGJB2遺伝子である。先天性高度難聴児は幼少児期に末梢平衡機能にも障害を伴う頻度が極めて高いことが知られている。我々は現在まで難聴の治療を目的とした、出生直後での内耳への遺伝子導入法を開発、同法にてGJB2遺伝子を発現するウイルスベクターを作成し、蝸牛内に正常なコネキシン26を発現させることに成功している。更にこの方法を発展させ、前庭および半規管の有毛細胞、支持細胞に効率的かつ非侵襲的に遺伝子導入行う方法を近年開発した(Okada et al. Otology & Neurotology, 2012.33(4):655-9)。この方法を基に、難聴モデルマウス前庭、特に世界で最も高頻度に発生するGJB2変異難聴の遺伝子改変モデルマウスの形態・機能評価と前庭を標的とした遺伝子治療の効率的な投与法の検討を行った。 これまでヒトで証明された優性阻害効果を認めるR75W変異を有するGjb2マウスモデルおよびGjb2コンディショナルノックアウトマウスを作成・維持し、これまで特に前庭に関与する病態を解析してきた。これらの結果を耳科学の専門誌にて報告した(Okada, J Otol Rhinol, J Otol Rhinol, 2015, S1, 37-40)。これらの難聴モデルに対し、正円窓経由・半規管経由の注入法で、GFPを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを投与した。その結果、これまで報告してきた正円窓経由のウィルス投与と同様に、新たに行った半規管経由のウィルス液還流法により正円窓経由と同等またはそれ以上の前提細胞へのウィルス感染効率が確認された。
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