研究課題/領域番号 |
26462569
|
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
谷口 雄一郎 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (30307475)
|
研究分担者 |
和田 弘太 東邦大学, 医学部, 教授 (20307482)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 鼻粘膜上皮細胞シート / 鼓室形成術 / 真珠腫性中耳炎 / 癒着性中耳炎 |
研究実績の概要 |
難治性中耳疾患では中耳手術後に粘膜を温存することが困難な症例も多く、露出した骨面より肉芽の増生が生じて含気腔が確保できず再発、再癒着をきたすことも多い。本臨床研究は、従来の中耳手術(鼓室形成術)後に鼻腔粘膜上皮細胞シートを移植して正常な粘膜を早期に再生させ、真珠腫性中耳炎の再発や鼓膜の再癒着を防止し、難治性中耳疾患に対する手術成績の向上を目指すものである。選定基準に基づき被験者を選定し,適合性を確認した後に十分なインフォームドコンセントを行い、鼻腔粘膜上皮細胞シート移植を施行した。被験者からの鼻腔粘膜組織採取、血液採取および自己血清の調整し、GMP対応施設にて鼻腔粘膜上皮細胞の培養および鼻腔粘膜上皮細胞シートの作製を行った。培養上皮シートの品質確認検査を実施し、検査規格値を満たすことを確認し、移植を行った。狭い上鼓室の骨面やあぶみ骨周囲に対しては移植用デバイスを用いることで細胞シートを移植することが可能であった。移植後6ヶ月以上が経過しCTを施行した弛緩部型真珠腫症例では、細胞シートの移植した部位に一致して中耳腔、乳突腔の含気化が始まり、 CT所見で非常に良好な含気化が確認され、理想的は術後形態が得られた。現在までのところ全ての症例で術後経過は良好であり,明らかな合併症,副作用,臨床検査異常値は認めていない。鼓膜所見の観察ではでは再陥凹,癒着などの所見はなく、CTにおいても著名な含気化が認められている。聴力検査においても術前に比較して改善傾向を認めており,良好な術後経過と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は弛緩部型中耳真珠腫、および緊張部型真珠腫症例に対して細胞シートを用いた鼓室形成術を施行した。癒着部位に関してはCartilage tympanoplastyを施行し、軟骨の鼓室粘膜側にもシート移植を行っている。弛緩部型に関しては従来通り、開放した乳突腔とscutumplastyに使用した軟骨部分に細胞シートを用いて移植行っている。現在のところ術後経過は順調であり、術後の含気化は良好で聴力も改善している。これまで合計5症例に対して手術を施行し、概ね順調に経過している。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度に細胞シートを用いた鼓室形成術を予定している。これまでに症例も蓄積されてきたため、術後の観察目的であるCT、聴力検査、鼓膜所見、再発さらに乳突腔の含気化を定期的に測定し、従来の手術との有効性の比較も行ってゆく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は予定よりも移植手術の件数が少なく、費用が少なく抑えられたため予定額との差が生じる結果となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
来年度は移植手術の追加を検討しており、これに関する諸費用が必要となる。また試薬、抗体等の追加購入と国際学会での発表、論文作成に関する支出を予定している。
|