研究課題/領域番号 |
26462572
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
水足 邦雄 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚・平衡覚研究部, 医師 (40338140)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 内耳 / ミトコンドリア / 蝸牛内電位 / 内有毛細胞 / 外有毛細胞 / らせん神経節 / 細胞死 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアの電子伝達系の不可逆的阻害剤である3-nitoropropionic acid(3-NP)を内耳に局所投与し作成した急性内耳エネルギー不全モデルを用いて、蝸牛内電位の低下が内耳有毛細胞およびらせん神経節細胞に与える影響を明らかにすることを目的とする。本研究ではまずCBA/CaJマウスを用いた3-NPモデルを作成することから開始した。方法は全身麻酔下に耳後部切開をおき、中耳骨胞を露出する。続いて中耳骨胞にマイクロドリルで小開窓を行い手術顕微鏡下に正円窓窩を明視下に置く。500mMの3-NPを正円窓窩にマイクロポンプと微小チューブを用いて局所投与する。3-NP投与後、正円窓窩からの薬液脱落を防ぐため、正円窓窩にコラーゲンスポンジを留置し閉創する。その後経時的に聴性脳幹誘発反応(ABR)を全身麻酔下に行い、ABR閾値変化を生じるか確認した。その後3-NP投与後、経時的に深麻酔下で解剖し蝸牛を摘出、組織学的な検討を行った。組織学的検討はプラスティック(Epon812)包埋による薄切切片を用いた内有毛細胞、外有毛細胞、およびらせん神経節の微細構造の観察を光学顕微鏡にて行った。その結果、3-NP投与後2週間を超えると徐々に細胞脱落が生じ、投与後3ヶ月となると、基底回転の内有毛細胞、外有毛細胞およびらせん神経節細胞の高度の脱落が生じ、高音域の難聴を固定化させる要因となっていることが明らかとなった。これらの細胞脱落は、時間経過とともに徐々に進行し、最終的には基底回転から徐々に頂回転へと進行する事も明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、CBA/CaJマウスを用いて3-nitropropionic acid(3-NP)による急性内耳エネルギー不全モデルを作成し、経時的に組織学的手法を用いて経時的に有毛細胞、らせん神経節細胞脱落の定量的に評価が可能となったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、CBA/CaJマウスを用いた3-nitropropionic acid(3-NP)による急性内耳エネルギー不全モデルにおいて、免疫組織学的手法を用いて経時的に有毛細胞、らせん神経節細胞脱落の定量的に評価を行い、さらに細胞死の定量評価とシナプスの詳細な観察を行うことにより遅発性細胞脱落の機序を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の適正な使用を行ったが、15,526円の残高が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験動物および試薬の購入に使用する。
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