研究課題/領域番号 |
26462573
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
竹腰 英樹 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 臨床研究センター(政策医療企画研究部), 医師 (10302738)
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研究分担者 |
加我 君孝 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 臨床研究センター(政策医療企画研究部), 名誉臨床研究センター長 (80082238)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Auditory Neuropathy / ANSD / 蝸電図 / ABR / VEMP / クリック / Chirp音 / シナプス電位 |
研究実績の概要 |
Auditory Neuropathy (AN)は1996年にKaga KらとStarrらにより独立して発表された新しい聴力障害である。他覚的検査ではABRは無反応であるが耳音響放射は正常、クリックによる蝸電図では蝸牛複合電位のN1は無反応か低振幅、-SPは良好に出現する。 平成26年度は研究分担者の加我が成人の後天性のAN症例の診断と治療指針について作成し公開し、後天性のいわゆるAuditory Neuropathy Spectrum Disorderについてはこれまでの追跡から3つのタイプを分類して国内外に発表した。従来はANの病態は内耳有毛細胞-蝸牛神経間シナプスの伝達異常と考えられてきたが、2007年にElberlingらによって開発されたCHIRP音を用いると、蝸電図では蝸牛複合電位が振幅は小さいが出現する可能性を見出した。本研究では、後天性と先天性の真のAuditory Neuropathy症例に対して蝸電図、ABR、カロリックテスト、VEMPを新たに導入し、これまでに解明されていないANの病態生理を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.健常成人のコントロールデータ収集:20~50歳の聴力正常な健常成人を対象に、クリック音、ショート・トーンバーストおよびCHIRP音3つの異なる音刺激を用いて、それぞれに蝸電図、ABR、VEMPをそれぞれの記録法に適切な音刺激で記録した。蝸電図は経外耳道法を用いた。電極はユニークメディカル社製の銀ボール電極を用いて記録し、波形は-SP、N1について音圧変化による潜時・振幅曲線を描く。ABRも3つの音刺激に対して潜時振幅曲線を描いた。VEMPについては3つの音刺激に対するP13、N14の潜時と振幅を測定した。 2.成人の症例の研究:成人のAuditory Neuropathy症例に対しては蝸電図、ABR、VEMP、カロリックテスト、回転検査を行った。 3.幼児症例:ABRと回転検査でフォローアップを行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのプレリミナリーな研究では、Auditory Neuropathy症例ではABRで無反応で蝸電図ではクリックでは-SPのみ出現し、N1はほとんど認めなかったが、Chirp音を用いて検査すると、ABRは無反応であったが蝸電図では-SPだけでなく判定し得る程度の振幅を増すN1を認めた。これはChirpを用いると約2倍の振幅の反応が出現することと関係があると考えられる。Chirp音のこの性質をVEMPにも応用する。VEMPの音刺激に対して最初に反応する感覚器は耳石器と考えられており、内耳奇形でCommon Cavityを中心とする各種のタイプおよび内耳には奇形は認めないがCochlear Nerve Deficiency症例でChirp VEMPかChirp蝸電図が出現するなど、Chirp音とVEMPを中心に新しい応用の開拓を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は蝸電図電極の共同開発を予定していたフランスのHerve客員教授とシンガポールの千原康裕研究員の二人が来日できなくなったことにより支出が少なくなった。しかし次年度以降に共同開発を続けるので、次年度に使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費:蝸電図電極の材料を購入
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