研究課題
今年度は日本語を母国語とする小児を対象とし、逐次的に両耳に人工内耳手術を受けた先天性高度難聴小児の視聴覚刺激に対する反応を検討した。まず、視覚刺激と聴覚刺激に矛盾のない設定で、先に手術を行った側では良好な聴取成績がえられ、健常聴力小児との比較でも一部を除いて、成績良好で両群に差が見られなかった。聴覚刺激と視覚刺激が矛盾する設定で、人工内耳初回手術側と健常聴力群を比較すると、人工内耳初回手術側で有意に視聴覚統合反応あるいは視覚優位反応が多く、人工内耳を介する音声言語認知では、たとえ一般的な語音聴取能が良好な小児でも視聴覚統合が有意に多く働いていることが分かり、先行する我々の研究結果が再確認された。一方、両側人工内耳使用小児で後から手術を行った側から音声入力を行った場合、先行手術側に比して語音弁別成績が不良で、視聴覚統合反応、視覚優位反応いずれも、先行手術側よりも高頻度で観察された。一般に、小児の視聴覚統合反応は年齢が高いほど、また人工内耳使用経験が長いほど起こりやすいが、後発手術側ほど視聴覚統合が生じやすかったことは、年齢や使用経験期間より語音弁別の明瞭度の要因の寄与の方が大きいことを示している。また、初回手術側人工内耳からの音刺激条件と、両側人工内耳からの音刺激条件では反応に有意差が見られず、両耳で人工内耳を使用している高度難聴小児の視聴覚統合は初回手術側からの入力を基盤にして惹起されていると考えられた。先天性高度難聴小児が音声言語を習得し、日常的に使用して成長する過程では、特に訓練等を行わなくても自然に視聴覚統合の神経機構も発達すると推測される。小児人工内耳のリハビリテーションにおいては、音声言語の習得と並行して視聴覚統合機能も習得されるということを理解し、療育プログラム構築に生かすことが重要と考える。
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