研究実績の概要 |
好酸球性副鼻腔炎における鼻茸形成などの組織リモデリングの機序とその対策について検討した。好酸球性副鼻腔炎では凝固系が活性化されているが、産生されたトロンビンなどの凝固因子には多彩な生理作用があり、プロテアーゼ受容体を介して、上皮細胞からのMUC5AC, PDGF, VEGF産生や、線維芽細胞からのTGF-beta, Eotaxin-1, RANTES, fibronectin産生などを促進し、組織リモデリングに関わることを明らかにした。さらに、好酸球は上皮細胞や線維芽細胞との相互作用により、こうした組織リモデリングに関わるサイトカイン産生を著しく促進すること、その機序として上皮細胞や線維芽細胞におけるEGF受容体のtransactivationが関わっていることを明らかにした。つまり、相互作用によってmatrix metalloproteinaseが活性化され、膜に結合したpro-ligandであるamphiregulinやTGF-alphaが切り出され、これがEGF受容体に作用して粘液やサイトカイン産生が引き起こされることを証明した。また、トロンビン刺激による上皮細胞や線維芽細胞からのサイトカイン産生も、EGF受容体のtransactivationによって生じることを明らかにした。 そこで、EGF受容体阻害薬の新たな治療薬としての可能性を、LPS刺激やアレルギー性炎症のラット鼻粘膜炎症モデルを利用して検討した。EGF受容体阻害薬AG1478は、腹腔内投与により濃度依存性に、LPS刺激による鼻粘膜上皮の粘液産生と好中球浸潤を抑制し、アレルギー性炎症における粘液産生と好酸球・好中球浸潤も抑制した。AG1478の点鼻投与によっても腹腔内投与と同等の抑制作用が認められ、EGF受容体阻害薬の局所投与に難治性の好酸球性副鼻腔炎に対する新たな治療薬としての可能性が考えられた。
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