研究実績の概要 |
(はじめに)近年クラリスロマイシン(CAM)などの14員環マクロライドに、抗炎症作用や抗ウイルス作用があることが注目されている。一方、H5N1, H7N9鳥インフルエンザウイルスは、ヒトに感染すると致死率が高く、パンデミック時には莫大な人的・社会的被害が予測される。そこで、鳥インフルエンザウイルス感染に対する新たな治療薬としてのCAMの有効性を、よりヒトに近いカニクイザルを用いて検証した。 (方法)カニクイザルに鳥インフルエンザウイルス(H5N1, H7N9)を感染させ、感染当日あるいは3日前からCAMを経口投与し、感染7日目に解剖して、CAM同時投与と前投与の有効性を比較検討した。 (結果)H5N1感染ではCAM投与群で早期に解熱傾向を示したが、H7N9感染では重症化せず、CAM投与による効果は乏しかった。気管拭い液中のウイルス量はH5N1, H7N9感染ともにCAM投与群で早期に減少した。感染7日目の肺組織内のサイトカイン(IFN-γ, IL-1β, IL-6, IL-8)産生量は、H5N1感染ではCAM投与群でいずれも減少し、H7N9感染ではIFN-γ, IL-8産生が減少した。CAMの前投与群では同日投与群より強い効果が認められた。以上のことからCAMは、鳥インフルエンザウイルスの感染・増殖を抑制し、生体側の過剰なサイトカイン産生も抑制して、パンデミック時の治療薬としての有用性が考えられた。
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