研究課題
好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は難治性、易再発性の篩骨洞を中心とした副鼻腔粘膜の好酸球性炎症性疾患である。喘息を高頻度に合併し嗅覚障害が高度で遷延化する特徴がある。血中好酸球数増多が認められることが多いがアレルギー性鼻炎の関与は少なく、血中IgE値の多寡も様々である。一方で、抗IgE抗体(omalizumab)療法がECRSにも有効との報告がある。長らく臨床上の特徴や検査結果から診断されることが多かったが、近年、JESREC Studyを経て診断基準や重症度分類が提案されるに至っている。しかし、その病態の詳細は不明である。病態に関する近年の報告で、ECRSにおけるIgE局所産生の亢進が示されている。そこで、今回、当科の手術で得られた下鼻甲介および篩骨洞粘膜を用いて粘膜中の抗原特異的IgE産生の測定、免疫染色による粘膜内の濾胞樹状細胞の分布に関する検討を行った。粘膜中の抗原特異的IgE量は、篩骨洞粘膜の方が下鼻甲介粘膜より有意に多かった。下鼻甲介粘膜は、Ⅰ型アレルギー反応の場として重要で吸入抗原に特異的な抗体の検出が予想されたが、炎症性篩骨洞粘膜ではさらに多くの検出が認められたことは注目に値する。JESREC Studyの基準委に基づくECRS群でnon-ECRS群と比べて篩骨洞粘膜での抗原特異的IgE増多が認められた。病理組織検査では、篩骨洞粘膜に濾胞樹状細胞を種々のパターンで認めた。中には、濾胞樹状細胞の集簇、濾胞形成を示す例も認められ、粘膜局所で検出される抗原特異的IgEが局所粘膜で産生されていることを示唆するもので興味深く思われた。
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JOHNS
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