研究課題/領域番号 |
26462592
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
片田 彰博 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (90281899)
|
研究分担者 |
野村 研一郎 旭川医科大学, 医学部, 助教 (00466484)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 機能的電気刺激 / 声門閉鎖運動 / 埋め込み型電極 / 神経再支配 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、麻痺している喉頭の筋に電気刺激を加えて筋収縮を誘発し、機能的な声帯運動を回復させることである。まず、声門閉鎖筋である甲状披裂筋を刺激するための埋め込み型電極を設計した。電極は縦8mm、横12mm、厚さ0.8mmのシリコンシートに直径3mmの電極を縦に2個、横に3個で計6個配置した。甲状披裂筋に対して単極刺激と双極刺激の異なる刺激モードが使えるように、不関電極を刺激する筋から離れた部位に設置できるようにした。 この電極で実際に声門閉鎖運動が誘発できるのか検討するために、イヌの声帯麻痺モデルを作成した。モデル動物は反回神経を切断した後に再吻合した喉頭筋再支配モデルと、反回神経切断後に吻合をおこなわない喉頭筋脱神経モデルの2群にわけ、電気刺激によって誘発される声門閉鎖運動の違いについて検討した。神経切断から3ヶ月後に声帯が固定していることを確認して、麻痺側の甲状披裂筋の表面に埋め込み型電極を留置した。経口的に硬性内視鏡を挿入し、電気刺激で誘発される声門閉鎖運動をビデオに記録して解析した。 喉頭筋再支配モデルの動物では、小さな電気刺激でも大きな声門閉鎖運動が効率的に誘発され、その運動量の調節も非常に容易であった。一方、喉頭筋脱神経モデルの動物では、電気刺激によって声門閉鎖運動を誘発することは可能であるが、より強力な電気刺激が必要であった。 このシステムが臨床応用されるためには、人工内耳のように刺激発生装置と電極を完全埋め込み型とし、体外からこれを駆動する方式が理想的である。その前段階として、この刺激発生装置を経皮的に作動させることができるか確認した。イヌの前胸部皮下にコイルを埋め込み、バッテリーに接続した体外部のコイルを埋め込み部分の皮膚の上にかざすことで、皮膚を通して刺激発生装置を駆動できることができ、喉頭に留置した電極によって声帯の内転運動が誘発された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電気刺激による声帯運動の回復を臨床応用するためには、長期間にわたって体内に留置可能な電極と刺激発生装置が必要である。我々は、人工内耳のように電力供給源と刺激発生装置のコントローラーは体外にあり、皮膚を通して体内の電極を駆動するシステムが理想的であると考えている。このようなシステムの開発には電気機器専門メーカーの協力が不可欠であり、現在我々は地元企業との共同開発をすすめている。 まずは電極の長期間留置が問題ないことを確認してから、刺激装置とどのように接続していくのか検討をすすめていく計画であったが、これまで試した電極には長期間の留置によって破損を生じるものがあり、さらなる電極の改良や埋込方法の工夫が必用である。また、電力供給源を体外に置き、コイルを用いて体外から経皮的に刺激発生装置を駆動することには成功したが、刺激発生装置をより小型化しなければ長期間安全に体内に埋め込むことが難しい。装置の改良や小型化には時間がかかっており、研究の進捗状況としてはやや遅れている状態である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、障害された喉頭機能を正常に近い状態に回復させる治療法の確立を目標としている。これまでの研究成果から、筋収縮の誘発に理想的な電気刺激パメーターや刺激電極の形状があきらかになっている。現状における課題は電極の耐久性の向上、そして刺激発生装置の小型化である。 電極自体の改良に加えて、破損しにくい埋込方法を検討し、安定した長期留置が可能になるようにする。さらに、刺激発生装置やコントローラーの小型化については共同研究をすすめている電気機器メーカーにお願いしているところである。試作器が完成すれば、その有効性と安全性についてもイヌを用いて検証をすすめていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
埋込電極の破損がみられるため、改良と工夫が必要である。さらに、共同研究をすすめている電気機器メーカーに対して、体内に埋め込み可能なより小型化された刺激発生装置と、それを経皮的に体外から制御し駆動するシステムの開発を依頼しているところであるが、開発に遅れが生じており試作器を用いた実験がおこなえなくなっている。そのために研究の遂行に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、今後開発される新しい電極や試作器の購入、そしてそれらの機器の有効性や安全性を検証するための実験に使用する予定である。
|