研究課題/領域番号 |
26462593
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
高原 幹 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50322904)
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研究分担者 |
大高 隆輝 旭川医科大学, 大学病院, その他 (00447103) [辞退]
上田 征吾 旭川医科大学, 医学部, 助教 (90447102)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 扁桃病巣疾患 / CXCR3 / CX3CR1 / APRIL |
研究実績の概要 |
①臨床学的検討 扁桃病巣疾患患者にて当科にて扁桃摘出術(以下扁摘)を施行した患者(掌蹠膿疱症100例、IgA腎症100例)をデーターベース化し、その有効性を検討した。その結果、掌蹠膿疱症では8割以上の患者に皮疹の改善を認め、IgA腎症ではその6割の患者に尿異常所見の寛解を認めた。今後はさらにその効果に影響を与える因子等、検討を続ける予定である。 ②ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 IgA腎症における扁桃T細胞上のCXCR3、CX3CR1発現解析を行った。IgA腎症群では扁桃や末梢血のCXCR3陽性CD3陽性T細胞数、CX3CR1陽性CD8陽性T細胞数は他の扁桃疾患にて扁摘を施行した群と比較し増加していた。さらに、末梢血での陽性細胞数は扁摘後低下を認めた。さらに、免疫染色においてIgA腎症糸球体周囲に浸潤したCXCR3陽性、CX3CR1陽性細胞を確認した。細菌由来DNA(CpG-ODN)における扁桃単核球の刺激実験では、CXCR3陽性CD3陽性T細胞数は増加し、CX3CR1陽性CD8陽性T細胞数は低下を認めなかった。トランスウェルでのマイグレショーン実験では、そのリガンドであるIP-10、フラクタルカインにてIgA腎症扁桃単核球では遊走細胞数が増加した。 ③IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生 IgA腎症におけるAPRIL(A ProlifeRation-Inducing Ligand)の発現について検討を行った。IgA腎症扁桃リンパ球はCpG-ODN刺激にてAPRILを過剰産生し、またそのB細胞は同刺激にてAPRIL受容体であるTACI(Transmembrane activator/calcium modulator and cyclophilin ligand interactor)の発現を亢進することが明らかとなった。さらにTACI阻害抗体添加にて扁桃リンパ球のIgA産生低下が認められた。また、APRIL刺激実験では、CpG-ODN存在下で非存在下に比較して、IgA腎症扁桃におけるIgAの産生が亢進していた。また患者血清での発現、術後変化の検討では、IgA腎症群にて習慣性扁桃炎群と比較して、血清APRIL値が高く、術後低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の科研申請において申請した平成27年度の計画はおおむね順調に進んでいる。結果が我々の予想にほぼ沿ったものだったため、迷わず次の実験に移行できたのが最大の理由と考えられる。また、本研究は扁桃摘出術がないと検体が得られず、研究自体が滞るが、長年の演題発表や総説執筆などの効果が現れたのか、各施設より紹介して頂く症例が増え、検体が得られる機会が増加した。
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今後の研究の推進方策 |
①臨床学的検討 更なる症例を蓄積し、データーベース化を行い、扁桃摘出の効果とそれに影響を与える因子などを解析する。 ②ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 上記解析結果をもとに症例数を増やして検討を継続する。さらに臨床像との相関を検討し、新たな扁桃摘出適応のマーカーになり得るか解析する。 ③IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生 上記解析結果をもとに症例数を増やして検討を継続する。さらに臨床像との相関を検討し、新たな扁桃摘出適応のマーカーになり得るか解析する。 ④糖鎖不全IgAの測定 扁桃単核球の培養上清におけるレクチンエライザアッセイにて糖鎖不全IgAを測定する。また、CpG-ODN刺激にて産生が亢進するか検討する。 ⑤病巣扁桃におけるTh17細胞 比重遠心法で得られた扁桃リンパ球においてTh17細胞(CD4+IL-17+細胞)の表面抗原と細胞内染色を行い、フローサイトメトリーにて解析する。さらに扁桃単核球を刺激し、その培養上清におけるIL-17、IL-22、IL-23の発現をELISAにて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究に使用した物品は平成26年度に購入した物品や、当科での研究のもう一つの柱である鼻性NK/T細胞リンパ腫の研究で購入した抗体、キットなどが流用できたものが多く、それらを使用したため差額が出現した。しかし、それらのものはほぼ使い切ったため本年度の物品費は全て本科研費で賄う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤に関してはCXCR3、CX3CR1抗体、マイグレショーンアッセイ用トランスウェルやリコンビナントIP-10、フラクタルカイン(CXCR3、CX3CR1リガンド)を再購入予定である。IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生においてはIgAやAPRILのELISAキット、APRIL受容体阻害抗体を購入予定である。扁桃リンパ球より産生される糖鎖不全IgAの測定にはビオチン化レクチンやエライザ用の固相化キットを購入予定である。
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