研究実績の概要 |
【はじめに】糖尿病は深頸部膿瘍の重症化に関わる危険因子と報告されているが、後向きの比較対象研究のみでシステマテックレビューは報告されていない。今回、糖尿病が深頸部膿瘍の臨床経過に与える影響について、システマテックレビュー、メタ分析を行った。 【対象・方法】文献検索を行った227論文の中で20論文がメタ分析に適切と判断された。メタ分析にはComprehensive Meta Analysis version 2 (Biostat, Englewood, CA)を用いた。 【結果】糖尿病を有する例は、1)頸部の複数の間隙への炎症、2)気道狭窄などの合併症の併発、3)感染源が特定困難に関するリスク比が各々1.96(95% confident interval [以下、CI]: 1.32-2.90)、2.43(95% CI: 1.80-3.30)、1.29(95% CI: 1.02-1.63)でいずれも有意であった。 細菌学的には糖尿病を有する例では、Klebsiella pneumoniae が培養で検出されるリスク比が3.28 (95% CI: 2.52-4.26)と有意に高かった。一方、Streptococcus属や嫌気性菌に関しては、各々のリスク比が0.57 (95% CI: 0.46-0.73)、0.54 (95% CI: 0.36-0.82)と有意に低率を示した。 【結論】糖尿病を有する深頸部膿瘍は、頸部の複数の間隙に炎症が進展し、気道狭窄などの合併症のリスクが増加した。細菌学的にはKlebsiella pneumoniae が起因菌として関与しているリスクが高いのに対し、非糖尿病例ではStreptococcus属や嫌気性菌が起因している可能性が高く、両群の起因菌の分布には違いがある可能性が示唆された。
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