研究課題
【はじめに】小児の深頸部膿瘍は成人より頻度が少なく病態が不明な点が多い。我々は最近10年の小児の深頸部膿瘍の症例を検討し、同時期の成人例と比較した。【方法】近年10年間における当科の深頸部膿瘍123例(小児15例、成人108例)を対象とした。【結果】男女比は成人群が71:35と男性に多いのに対し、小児群は6:9であった。豊嶋ら(化学療法の領域,10:1715-1720,2000)の深頸部膿瘍の進展度分類で検討すると、舌骨のレベルより下方へ進展したstage III以上の進行例は、成人群54%(58/108)に比べ、小児群20%(3/15)と有意に少なかった(p < 0.05)。病因を①咽喉頭炎②歯性③唾液腺炎④リンパ節炎⑤その他に分類すると、成人群は、咽喉頭炎と齲歯を原因とする例を合わせると70%以上を占めた。一方、小児群はリンパ節炎由来が11例(73%)と最多を占めた。細菌培養検査並びに次世代シークエンサーを用いた解析では、Streptococcus属は成人群が60例(56%)で検出されたのに対し、小児群では4例(27%)と低率であった。また、嫌気性菌は成人群で49例(45%)検出されたのに対し、小児群では2例(13%)であった。一方、Staphylococcus属の場合、成人群での検出が10例(9%)に過ぎないのに対し、小児群では9例(60%)と過半数に検出された。手術アプローチを比較した場合、小児群では7例(47%)が経口からのアプローチのみで治癒したのに対し、成人群では頸部外切開なしで排膿できたのは22例(20%)であった。【考察】小児の深頸部膿瘍は病因・進展度・原因菌の点からも成人例と異なることが示唆された。上記結果の他、培養で同定されない中耳炎の重症例に対し、分子生物学的検索で中耳炎の起炎菌として初めてCampylobactor rectusを同定した。
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