研究課題
中・下咽頭表在癌は予後良好であるが、症例の蓄積により問題点も明らかとなってきている。NBI(narrow band imaging)を代表とする内視鏡画像技術の発達に伴い、微細な中・下咽頭表在癌を同定し、内視鏡下あるいは顕微鏡下で経口的に切除する小侵襲治療が可能となってきた。表在癌の治療は今後さらに普及すると予想され、基礎的研究から表在癌の進行を理解し、その治療戦略に役立てることは非常に重要なテーマである。一般に、上皮内癌が進行すると基底膜を破壊して上皮下浸潤を来し、浸潤癌へと移行していく。表在癌の上皮下浸潤を解析することで、浸潤癌への移行のメカニズムの解明、さらには予後因子の同定などにより表在癌・浸潤癌に対する治療戦略の確立に寄与することが期待される。本研究は上皮下浸潤部における遺伝子、分子の発現を網羅的に解析し、上皮下浸潤に関わるメカニズムの解明、予後規定因子の同定を行うことを目的とする。中下咽頭癌の癌病変において、上皮内部と上皮下浸潤部の組織を採取し、その脂質発現と組織内での分布をイメージングマススペクトロメトリー法を用いて網羅的に解析した。その結果、上皮下浸潤部においてアラキドン酸を含む3種類のリン脂質、すなわちPC (16:0/20:4)、PC (18:1/20:4)、PC (18:0/20:4)、が有意に多く発現をしていることを世界で初めて見出した。アラキドン酸は炎症に関与しており、癌が上皮下浸潤していく際には炎症機転が働きながら進行していくことが示唆された。
すべて 2017
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Biomed Res Int
巻: 2017 ページ: 5387913
10.1155/2017/5387913