研究課題/領域番号 |
26462604
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小川 真 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80403179)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 咳払い / 喉頭 / electroglottigraphy / 高速度撮影 |
研究実績の概要 |
咳払いは発声および嚥下とともに喉頭が関与する上気道運動の中の1つであるが、咳払い時の喉頭運動は急速かつその持続時間が極めて短いためにこれまで正確な評価が困難であった。今後咳払い機能の評価法を確立することにより誤嚥性肺炎発症のリスクの評価に役立つ可能性がある。本研究では、高速度撮影装置および電気声門図(EGG)を用いて、咳払い時の声帯運動を反映するパラメータを定義し、正常人における強弱の咳払いの間、および、正常症例と片側声帯固定症例の間でこれらのパラメータを比較することで、咳払いの効率を最も良好に反映するパラメータの同定を試みた。 健康成人例10例、および片側声帯麻痺症例20例を対象に、被験者の頸部にEGG電極を装着し、喉頭ファイバースコープを経鼻的に挿入した状態で強弱の咳払いのタスクを指示し、高速度撮影画像・EGG/音響波形を記録した。これらを基に吸気相・圧縮相・呼気相の持続時間を計測した。また吸気相では最大声門開大時から内転する際の声帯運動より、動画解析ソフトDipp MotionProを用いて最大声帯外転角度および声帯内転の平均角速度を算出した。さらに呼気相ではEGG波形を基に最大声帯振動数を算出した。 その結果、以下の結果が得られた。強い咳払いにおいては、弱い咳払いに比較して、(1)吸気相および呼気相の持続時間が短い、(2)吸気相の声帯内転時の平均角速度が大きかった、(3)呼気相の最大声帯振動数が大きかった、(4)また片側声帯麻痺症例では、正常例と比較して、圧縮相持続時間が短く、最大声帯振動数が小さかった。 以上のことから、高速度撮影装置およびEGGを用いることで強弱の咳払いにおける声門部および声門上部運動の時系列および運動速度を正確な評価が可能となった。さらに呼気相における最大声帯振動数が、咳払いの効率を反映する臨床上有用なパラメータとなる可能性が提起された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、既に、高速度撮影画像およびEGG所見から、吸気相・圧縮相・呼気相の持続時間、吸気相における声帯角速度、呼気相における最大声帯振動数を含む複数のパラメータの計測法を確立した、さらに、強弱の咳払い間、および正常例と片側声帯固定症例との間において、これらのパラメータの比較を完了し、吸気相の最大声帯振動数が最も咳払い効率を反映するパラメータとなるという根拠を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、吸気相の最大声帯振動数が最も咳払い効率を反映するパラメータであることを統計的に照明するために、正常例30例・片側声帯固定症例30例まで症例数を増やし、Receiver Operating Characteristics Analysisを用いて信頼性を比較する。 また、最大声帯振動数と咳払い効率との関連を明らかにするために、スパイロメトリーを用いて最大呼気流量率を含む空気力学的パラメータとの相関性の検討を行う。 さらに、片側声帯麻痺症例のみでなく、高齢者、長期臥床後の廃用症例、神経変性疾患症例など様々な症例の咳払い時最大声帯振動数を記録し、誤嚥性肺炎発症リスクとの関連性について検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
741円という小額のために経費に使用できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後の英文校正費の一部に充当させる予定である。
|