研究課題
エピジェネティクスとはDNAの配列変化を伴わない後天的な修飾による遺伝子発現制御機構で、DNAメチル化、ヒストン修飾に伴うクロマチン構造の変化、マイクロRNAなどのノンコーディングRNAによる制御があげられる。口腔潰瘍は、摂食障害や吸収障害により栄養状態の悪化を招くだけでなく、局所および全身感染から生命をも脅かす重要な危険因子となるがその原因は自己免疫疾患や炎症性疾患あるいは化学放射線療法など医原性のものまで多岐にわたる。難治性の口腔潰瘍は上皮幹細胞や前駆細胞の増殖分化に破綻をきたしている可能性が高くエピジェネティックな制御因子の同定が急務と思われる。ラット口腔潰瘍モデルを用いて口腔粘膜再生過程におけるDNAメチル化制御の解析を行い、再生上皮の増殖活性のピーク時に肥厚再生粘膜の基底上層でDNAのメチル化レベルが低下することが示された。DNAメチル化制御に関し、新規メチル化酵素のDnmt3aおよびDnmt3bの発現解析を免疫組織学的に行ったところ、口腔潰瘍粘膜再生過程におけるDNAメチル化パターンはDnmt3aおよびDnmt3bによる制御を受ける可能性が示唆された。上皮幹細胞の増殖に関与している可能性が示唆されているWnt5aの時間的空間的発現パターンは、DNAメチル化レベルと逆相関する傾向が示され、Wnt5aの発現がDnmt3aおよびDnmt3bによるDNAメチル化パターンにより負に制御され、口腔粘膜再生における細胞増殖から細胞分化に向かう制御に強く関与している可能性が示唆された。以上の結果から、Wnt5aの発現制御を標的とすることで上皮細胞の増殖および分化動態を理想的に誘導できる可能性が示唆され、効率的な口腔粘膜再生を実現できる可能性が示唆された。
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Journal of the Association for Research in Otolaryngology
巻: Epub ahead of print ページ: 1~19
10.1007/s10162-018-0662-z
Acta Oto-Laryngologica
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