研究課題/領域番号 |
26462612
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
喜友名 朝則 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10433103)
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研究分担者 |
鈴木 幹男 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00226557)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 痙攣性発声障害 / fMRI / 安静時fMRI / functional connectivity |
研究実績の概要 |
痙攣性発声障害(Spasmodic dysphonia:以下SDと略す)は、声の詰まりや途切れ、震えを特徴とし、発声中の声帯の不随意な動きにより生じる疾患である。SDは従来稀な疾患とされてきたが、医療者の疾患認知度が上昇したこと、インターネットを通した患者自身による情報収集活動、などにより患者数は増加しつつある。神経学的所見から本疾患を局所ジストニアの一つとする報告が多く、中枢神経系の機能異常が推定されているが、機能異常部位や病変に関して一定した見解は得られていない。研究代表者はこれまで機能的核磁気共鳴画像functional MRI(fMRIと略す,脳機能画像の一つ)を用いて、内転型SDの発声時の脳活動を健常者と比較し、小脳、大脳皮質感覚運動野、基底核、視床、聴覚関連野に異常脳活動を認めた。この脳活動がSDを生じる主たる原因であると推定したが、この結果を臨床応用するには発声に関して活動する脳部位間の機能的連結(促進、抑制 )、SDに特徴的な所見の抽出、脳活動の安定性を調査する必要がある。多くのSD患者は音声によるコミニケーション障害のために社会から孤立し、心理的な不安を抱えており、治療につながる病態の解明が重要である。本研究の目的は、SDの病態に関わる脳活動、診断の補助となる所見を見つけ、最終的にはSDの治療戦略を導きだすことにある。本年度は内転型SDと健常人のそれぞれの安静時fMRIにおける脳機能連結に関して検討を行った。聴覚関連ネットワークにおいて聴覚と小脳の有意に強い脳機能連結をSD群で認めた。今後さらに症例を増やす予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)話声位発声時脳活動の比較:常人、SD症例、一側性声帯麻痺を対象に発声時の脳活動をfMRIで計測する。タスクは「i-」「i-i.i-i」「数字読み上げ」の3つとする。これまで10例のSD症例に実施したが、さらに症例を増やし、SPM8ソフトを用いて群解析を実施し、健常人、一側性声帯麻痺と比較する。2)SDで検出された健常人と異なる脳活動部位の機能関連計測:上記1)で測定した症例のデータをもとに、脳の各領域の機能的連結(促進、抑制 )について調べる。機能的な関連部位はSPM8にコンパイルしたconnソフトにて解析する。3) SD症状の強い症例と弱い症例の話声位発声時脳活動の比較:SDでも音声所見が強いものと弱い症例がある。両者を群解析で比較することにより、症状悪化と相関する部位を抽出する。また検出できた部位の信号強度を計測し、年齢、性別、疾患持続など臨床情報と相関する部位を明らかにする。4)SD症例の治療前後の脳活動変化の測定:SD症例に手術治療を行い、治療前後の発声時脳活動変化を測定する。経時的に繰り返し測定し、臨床所見と脳活動変化の相関を測定する。研究期間が限られているため、術後1年間までの測定を予定する。5) 個別のSD症例の脳活動を健常者群と比較しSD診断に有用な部位を検出する(ノンパラメトリック解析) 上記1)-5)のうち、1)-3)までの解析は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後症例数を増やしていくとともに、手術やリハビリなどの治療前後、さらにSD診断のための個別のSD症例に関して検討を行い、診断に有用な部位について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究を進めていたが、年度末に少しづつ結果が出てきた状況であり、まだ論文や発表が十分にできていない状況である。次年度に論文投稿や国際学会での発表を検討しており予算が必要である。分担者分に関しても本年度はまだ十分な研究結果が得られていなかったため使用していなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に論文投稿や国際学会での発表を検討しており予算が必要である。サーバーシステムなどに関しても新しく購入予定である。
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