研究課題
がんの制圧には発癌抑制、増殖抑制、浸潤転移抑制が重要であり、咽頭癌の浸潤転移に関わる可能性があると考えられる、細胞極性制御因子、器官形成制御シグナル経路、EMT関連因子について検討を行うことを本研究の目的としている。がん細胞では器官形成シグナル経路の変化により浸潤転移がおきると考えられているが、この経路の上流において細胞極性制御因子が関与している。咽頭がんなどの頭頸部扁平上皮癌における細胞極性因子と考えられているJAM-Aが、腫瘍の浸潤先端部分で高発現していることを見出した。昨年度は咽頭がん細胞株を用いて頭頸部扁平上皮癌におけるJAM-Aの役割をみるため、siRNA-JAM-A導入による咽頭がん細胞株の増殖度を評価し、siRNA導入によりJAM-Aの発現が低下しておりまた増殖速度の減少も確認されたことを報告した。更にsiRNA-JAM-A導入による咽頭がん細胞株におけるmigrationを検討し、導入群ではコントロールと比較して浸潤細胞数の減少が認められ、JAM-A発現が抑制されることで遊走能が低下する可能性を考えた。1)今回は咽頭癌細胞株を用いてJAM‐Aのシグナル伝達経路を検討した。各種シグナル伝達経路阻害剤を用いたところWnt、EGFR、p38 MAPK、Hedgehog inhibitorによりJAM-A発現の低下が観察された。2)器官形成シグナル制御に関与がみられるHippo経路の重要分子YAPを頭頸部扁平上皮癌でみたところ、すべての癌細胞の核が陽性であった。3)癌の悪性化EMTに関与がみられる転写因子ZEB1について頭頸部扁平上皮癌でみたところ、今回の癌組織においては癌細胞以外の周囲の間葉系細胞に陽性であった。
2: おおむね順調に進展している
.頭頸部がん全体の細胞極性制御因子と癌細胞浸潤の関連性は基礎的検討から大きな進展がありすでに一流誌に受理されている.しかし,本課題の咽頭がんについてはウイルスとの関連性が注目されており,ウイルス関連の有無とこれらの因子の関連性はまだ明らかにできていない.その点ではまだ最終的な課題の内容の完結には至っていない.
1)様々な癌に関与が知られているHippo経路の重要な分子YAPについて、JAM-Aを含めた上皮極性分子との関係を解析する。2)頭頸部扁平上皮癌で高発現がみられる脱アセチル化酵素(HDAC)とタイト結合分子の関係について癌の悪性化(浸潤、転移)に焦点をあてHDAC阻害剤を用いて解析する。
試薬等の物品費の使用が予定よりも少額であったため
試薬等の物品費に使用する予定である
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Oncotarget
巻: 印刷中
10.18632/oncotarget.8432.
頭頸部外科
巻: 25 ページ: 9‐14
日本気管食道科学会会報
巻: 66 ページ: 284‐290
耳鼻咽喉科展望
巻: 56 ページ: 10-11