研究実績の概要 |
唾液腺がん細胞株の低酸素および通常酸素分圧で培養した際の細胞形質を確認する解析を進めた。具体的には唾液腺がん細胞を用いて低酸素環境下でのEMT誘導におけるHIF-1αおよびSTAT3の役割、とくにシグナル伝達系を明らかにするとともに、EMTに伴うEGFRやVGFRを介したシグナル伝達系や癌の微小環境の変化に伴う血管新生のメカニズムを明らかにすることを目的とし、解析を行った。また、国際的に唾液腺がん細胞株の入手が困難であり、名古屋市立大学での樹立の準備を進めた。 唾液腺がん細胞株A253と、controlとして甲状腺癌細胞株8305c、TTを酸素濃度1%の条件で24時間低酸素培養器で培養した。immunoblottingにてHIF-1αの発現を確認した。A253とTTではHIF1α, βが発現していたが、8305cでは発現が確認できなかった。 低酸素条件にてHIF-1αの発現があったTTとA253に対し、同様に低酸素条件において転移、EMT関連蛋白の変化をimmunoblottingにて観察した。p-STAT, STAT, β-actin, NDRG1などでは発現量の変化を認めなかった。 また、名古屋市立大学にて唾液線がん細胞株を樹立した(NSDC-5F)。本細胞株でも同様に低酸素条件下でのHIF-1αのstatusを解析しHIF-1α, βの発現がみられた。しかし、低酸素条件下でのHIF-1α誘導によりSTATなど、EMT関連タンパクの発現、リン酸化の変化はみられなかった。 結論として、唾液腺がん、甲状腺がん細胞株では低酸素条件下でのHIF-1α誘導を認めた。しかし、この条件下でのSTATの発現上昇やリン酸化はみられなかった。唾液腺がん細胞株においての低酸素条件下でのHIF-1誘導による、STAT以外の因子のEMT関連蛋白への作用と、転移浸潤能の上昇への関与を検討していく。
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